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【Vol.436】冷泉彰彦のプリンストン通信『問題だらけの日米政局を考える』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「参院選があぶり出す、一過性の選挙の大弊害」  日本の選挙ということでは、衆院選の方は政権選択という色彩が強いので、 まだ「まし」ですが、参院選の場合はどうしても緊張感に欠ける傾向があり ます。特に、今回は与党有利ということもあり、余計に「ゆるんだ」選挙に なっています。そんな中で、どうにも首をかしげざるを得ない、奇妙な現象 が起きています。  その第一は、「選挙前だから仕方がない」とか「選挙が終わるまでの我 慢」という不思議な現象です。  まず「マスク」の問題があります。屋外での着用は「距離があり、会話が 少ない」場合は必要ないというようなメッセージは厚労省などから出ていま す。ですが、例えば「熱中症の危険を避けるためには、もっと強い注意喚 起」が必要だという話が出ると、今でもウヤムヤになりがちです。  そこで出てくるのが、「マスク警察」的な心情を抱えた人を怒らせてはい けないので、「選挙が終わるまでは仕方がない」という理屈です。  同じような現象は「水際対策」でも見られます。瀕死の観光業を蘇生させ るには、国境をオープンすることが必要です。具体的には、G7+中国、韓 国、台湾、シンガポールなどの「ビザなし渡航」を再開し、入国72時間前 のPCR検査を廃止する必要があります。また一日の入国上限などという 「航空会社いじめ」も撤廃すべきです。  ですが、この緩和策についても「選挙が終わらないと無理」という声が多 く聞かれます。「高齢者を中心とした鎖国論」を刺激していけないというわ けです。  もっと深刻なのが電力です。ここ数日、猛暑日が続く中で、特に東京電力 管内では電力が逼迫しています。その結果として、何と日本の場合は、ドイ ツ同様に「火力発電所の再稼働」を必死になって進めるという恐ろしいこと になっています。  排出ガスをモクモクと出すだけではありません。中国が猛烈な勢いでエネ ルギーの多様化を進めている一方で、「環境先進国」だったはずの日本が反 対の方向に走っているのですから、このままでは外交上も中国から「叱られ る」という状況になってしまいます。  ここは、東日本大震災以降に厳しく整備された新しい安全基準に合致した 原子炉を粛々と稼働させることで、電力供給と脱炭素を進めるのが正道と言 えるでしょう。ですが、ここでも同じようなセリフが出てくるのです。「選 挙が終わらないと無理」というのです。  ちなみに、電力逼迫時にはEVの充電ステーションはどうするんでしょう か?自粛して電欠車がゴロゴロというわけにも行かないと思うのですが。 (続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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