━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
津田大介の「メディアの現場」
2022.6.17(vol.490/part1)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
──Don't lose your temper──
みなさん、こんにちは。津田大介です。
小田嶋隆さんが亡くなっていろいろ自分の仕事を振り返っていたら、僕が小田嶋さ
んの書籍の書評をやったことがありました。共同通信からの依頼で、全国のいくつ
かの地方紙の書評欄に掲載されました。書評なのであまり長い文章ではないんです
が、いま読み返してみると、小田嶋さんのSIDE-Bをうまく伝えることができた書評
だったんじゃないかなと思ったので、下記転載します。
--------
●「友だちリクエストの返事が来ない午後」書評
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/477831445X/tsudamag-22
あらゆる出来事を予想も付かない視点から切り取り、ユーモア混じりの斬れ味鋭い
文体で現代社会と読者に警句を飛ばす──コラムニスト・小田嶋隆の評価はここ数
年でほぼ固まった。間違いなく現在の日本を代表するコラムニストの一人だ。
そんな小田嶋の最新作は時事問題とはまったく無関係の「友情論」。年齢や社会的
立場の変化によって大きく変わる「友だち」という存在について24通りの切り口か
らまとめられている。
LINEやフェイスブックの登場により、我々は確かに多くの人と「つながり」やすく
なった。だが、それは本来もっと多様であるはずの「友情」のあり方や育み方を狭
めていないか。小田嶋は「人脈」や「コミュニケーション力」ばかりがもてはやさ
れるようになった現代社会に対する苛立ちを隠さない。
普段のコラムならその苛立ちを突き放して客観的に書くことで、読者に爽快感を与
えることができたはずだ。だが、本書はその点で非常に歯切れが悪い。友だち論と
は突き詰めれば人間関係論であり、社会における個人の立ち位置をどう捉えるかと
いう話に行き着く。「場末」から社会に対して鋭いカットボールを投げてきた小田
嶋も、この普遍的で答えの出ない難問に対してはストレート勝負を余儀なくされる。
それが歯切れの悪さにつながっているのだろう。本書は「一匹狼」で他人との人間
関係を構築することが苦手な小田嶋が友だちというフィルターを通してどう自己肯
定するのか──その思考の過程を克明に追った本とも言える。爽快感を求める向き
にはオススメしにくいが、恒常的に人間関係の悩みを抱えている人にとっては有用
な「痛み止め」となるはずだ。
小田嶋はかつて『人はなぜ学歴にこだわるのか』というコラム集で本書と同じよう
に答えの出ない難問に悪戦苦闘しながら立ち向かった(実は両書の企画、担当編集
者は同じ人間とのこと)。両書はいわば小田嶋隆のサイドB、実験的デモトラック集
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)