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今市的視点 IMAICHI POINT OF VIEW
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7月2日号
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多くの国民の誤解を生んだ消費増税の使い道
~社会保障に使われる増税では全くないことが参院選の今頃露見
今回の参議院選挙では野党の一部が消費税廃止や減税など
を公約に掲げていますが、与党自民党は当然そんなことは
できないとはなからそうした政策を相手にもしない状況
です。ただ、この消費税廃止や減税の議論で多くの国民
が初めて知ることになったのが5%から10%までの増税
で増えた税収が全然社会保障に使われていないという現実
でした。
そもそもこの消費税、税の直間比率を是正し、税制全体
としての負担の公平を高めるうえで間接税が果たすべき
役割を十分に発揮させるために導入されたもので、89年
に3%の税率からスタートしたものでした。導入当初は
高齢化社会に対応するために年金、医療、福祉のための
財源確保が急務とされて導入された経緯があります。
この消費税導入当初を知る国民は社会保障の財源として
こうした税制を導入するのはやむなしといった感があった
ことが思い出されます。
この消費税は導入される段階から将来的に税率が大きく
上昇するのではないかといった嫌な予感が多くの国民に
浮かんだものですが、実際その予感は間違いなく的中する
ことになり、平成9年に5%、平成26年に8%、そして
令和元年に10%と順次引き上げられることとなりました。
一度間接税制を設定すればあとは税率さえ弄ることで簡単に
税収が増えるわけですから財務省も政権も積極的に税率
アップに取り込んだことは間違いない事実です。しかし
多くの国民は消費税の税率アップにより増加した税収が
社会保障に使われていると大きな勘違いを起こしたまま
10%の引上げまで到達しており、今回の参議院選挙で
消費税廃止や減税の議論が起きて初めてその税収の使途
が異なることに気づくことになったわけです。
■消費税は一般財源、決して社会保障充実のための特定財源ではない
この消費税、上述のようにスタート当初から高齢化社会の
社会保障増加に対応するための税金というイメージが非常
に強かったわけですが、実際は一般財源であり、その税収
のすべてが社会保障のためにつかわれるといった規定は
どこにもありませんでした。ようやく社会保障の記述が
法律の中に織り込まれたのは民主党政権最後の野田元
総理が財務省にすっかり丸め込まれて税・社会保障一体
改革などと言い出して法案が成立した際に辛うじてその
使途を社会保障にも利用するとしたのが2012年ですから
それまでは使途さえも規定されていなかったのが現実です。
確かに2012年に税収の使途を明記はしましたが、そもそも
社会保障のための特定財源とはなっていませんから、社会保障
にも一部は使います程度で全く拘束力のないものであること
がいまさらながらにわかります。まあ平たく言えば増税
法案を通しやすくするために記載してみただかというのが
正直なところなのでしょう。
NHKの日曜討論に登場した自民党の高市政調会長は、2012年に
加筆されたこの規定を盾にとって、消費税は法律で社会保障に
使途が限定されているデタラメを公共の電波で言うのはやめて
いただきたいなどと野党からの攻撃を退けましたが、確かに
記載はされているものの実態として社会保障だけが使途には
なっておらず、ネットでは批判が相次ぎ大炎上となりました。
■一般財源である以上何に使ったのかはさっぱり判らないように仕立ててある
悪意をもってこの法律の制定をみれば当初から一般財源で
ほかの税収と混ぜて使っているわけですから我々国民が
外側から監視しようと思っても使途の内訳は全くわからない
のが現実です。ただひとつだけ検証できるのはこの間に
社会保障費は増えておらず逆に削減されているという事実
です。一部の野党は大企業の法人税の穴埋めにつかって
いると指摘していますが、それを証明するのは難しいもの
の社会保障費が増税にもかかわらず削減されているという
ことはそれに使われておらずほかの使途にまわされている
ことだけは間違いない事実のようです。まあここだけ見て
もせっせと増税で支払いをしてそれに耐えてきた国民
としてはかなり憤慨すべき状況ですし、最低限外から
使途のチェックが出来るように特定財源化すべき事案ではないで
しょうか。ひとのことを疑いたくはないですが、どうも
この法案を作った役人が最初から自由度の高い使途に対応
できるようにしたとしか思えない状況で時の政権はまんま
とその策に乗ったきらいがあります。
■茂木幹事長「消費税下げたら年金3割カット」もまんざら間違いではなさそう
6月19日のNHK 日曜討論において野党が消費税減税を
強く訴えた中で出演した茂木自民党幹事長は「消費税
下げたら年金3割カット」と発言したことが大問題に
なりました。消費税減税したら年金3割カットするぞと
国民に恫喝を加えるように聴こえたわけですが、決して
肩をもつつもりではありませんが一般財源としての消費税
の税収を足もとの21.6兆円から税率5%で半分にした
場合、11兆円弱が減収となり国が基礎年金に対して国庫
負担している12.8兆円に相当する額が消滅し結果的に
公的年金収入が全体の20%から場合によっては30%
程度減少することを茂木氏は示唆したものと思われます。
税収全体から考えれば消費税5%分が歳入として経ること
はちょうど国庫の負担分の合致するのでこういう言い方
になったのでしょうが、消費税から年金の国庫負担分を
捻出してたのかよという話も初耳ですし、全体税収の中
で、たとえば法人税率をあげるなどして捻出を考えれば
いいだけの話ですから消費税下げたら年金3割カット
というのもかなりデフォルメした発言で結果的には
国民に酷く不親切な問題発言であると言えそうです。
■明確なのは消費増税しても社会保障は充実しないということ
ここまで書くと消費増税による税収の使途が非常に判り
にくく、あえてそういう仕組みに仕立てたとしか思え
ない印象がありますが、このやり方で行けば日本の
社会保障はいつまで経っても充実することはありません
し、税収が少ないから年金も減らすなどととんでもない
とばっちりの政策を実現されたのでは国民はもうこの国
では生きていかれない状況に陥るのは間違いなさそうです。
岸田首相はバイデンと会談すれば躊躇もなく軍事費2倍を
確約しますし、G7に出席すれば2027年までに650億ドル
(約8兆8000億円)以上を低・中所得国のインフラ投融資
にあてるなどと気前のいいことを表明していますが、日銀
による財政ファイナンスが破綻寸前の足元の状況ではこんな
に多額の資金をいとも簡単に使えるような大国ではなくなって
いることをもっとしっかり認識すべきです。
5兆円の防衛予算の増額といえば年間の消費税収の4分の1
に当たりますし8.8兆円のインフラ投資は実に4割に該当
する大金です。年金3割を削ってなぜこんなところに資金を
充当できるのか、開いた口が塞がらない状況です。
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