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第24回 日本が本当に「明日のウクライナ」にならないために

富坂聰の「目からうろこの中国解説」
 この1週間を振り返って思うのは、国際情勢がまた大きく動いたということだ。影響を及ぼしたのはドイツで開かれたG7エルマウ・サミット(6月26日から28日)とその直後に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会合。そして二つの会議に対抗するかのように行われたロシアとカスピ海沿岸国との首脳会議だ。  G7とNATO首脳会合の主題がウクライナ問題であったことは疑いない。しかし同床異夢の一面も晒した。アメリカと日本はNATOとアジアの同盟国をまとめ上げ、中国に対抗しようと動いていた。あからさまな対中包囲網形成の動きに、さすがに習近平政権も神経質を尖らせ始めたようだ。  直前(6月23日)にオンライン形式で開催された第14回BRICS首脳会議では、議長を務めた習近平国家主席が講演。「国連を中心とした国際体系と国際法を基礎とした国際秩序を守り、冷戦思考と集団的対立を捨て、一方的制裁と制裁の乱用に反対し、人類運命共同体の『大きなファミリー』によって覇権主義の『小集団』を超越する必要がある」と述べた。  あらためて言うまでもないが、「国連中心」の強調は、世界を対ロ経済制裁に巻き込もうとするアメリカへの批判だ。冷戦思考の「小集団」はNATOを筆頭に日本、アメリカ、オーストラリア、インドの四カ国の枠組み・クワッド(=QUAD)や英豪の新たな安全保障の枠組み・AUKS。そしてインド太平洋経済枠組み(IPEF)などを指す。  日米が中国排除のために掲げる旗印は反権威主義国家だ。それを意識して習近平は「我々は開放・包摂的、協力・ウィンウィンというBRICS精神」だと強調する。  アメリカが次々に繰り出す仕掛けに、中国が防戦に躍起になっているというのがこれまでの印象だ。NATOの「戦略概念」でも、初めて中国について明記された。包囲網は明らかに一歩ずつ形成されているようだ。

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