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【Vol.437】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本病を考える(その1)』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「ベルマーク問題を考える」 (前略) 初期のベルマークについては、「僻(へき)地の学校を助ける」というの が立派なスローガンになっており、それこそ純真な昭和の家族や学校が、理 想に燃えて集めていたのは事実です。しかし、今は21世紀です。  チマチマとベルマークを切り貼りしているうちに、「日本全国が僻地にな ってしまった」というのが真相ではないでしょうか? とにかくベルマーク の話を聞くたびに、日本終了と言いますか、諸行無常の悲しい風が吹いてい くのを感じます。  現在のベルマークですが、往時とは全く変わっていません。とにかく商品 のパッケージについているマークをチマチマと集めて、主催団体に送るとい うオペレーションは昭和の時代のままです。  ちなみに、「スポンサー企業別に仕分けし、その上で点数別に分けて台紙 に貼る」という作業は、主催団体としては「不要」としています。ですが、 各学校のPTAでは、歴代の「ベルマーク委員」の申し送り事項として「鉄 の掟」として「台紙貼り」を死守しているケースが多く、多少改革意識のあ る保護者が数名立ち上がったとしても改革は難しいようです。  では、ルール上は「台紙貼り」は不要だとして、各学校で集めたベルマー クをザクっと一つの封筒に入れて送ればいいのかというと「違い」ます。  これは公式のルールなのですが、ベルマークは「スポンサー企業」別の 「専用封筒」を請求して、その企業別に仕分けしたベルマークを、その専用 封筒に数を書いて入れて送ることが義務付けられています。その際に、「日 清食品」と「日清食品ウェルナ」と「日清オイリオグループ」は別なので封 筒も専用の別のものが必要だとか、まるで昭和30年代の事務仕事かよとい うようなワケワカラン規則があったりします。  昭和30年代当時の日本は貧しかったので、多くの職場の「お茶」は自腹 でした。つまり茶封筒で「お茶代」を現金で集金して、その金で茶っ葉を買 ってお茶汲みをしてもらう、そんな習慣があったのです。封筒で集めるとい うのは、そんなイメージでしょうか。  どうして企業別の封筒に集めるのかというと、つまり、ベルマークの「原 本」を各企業に送る必要があるからです。それは「こんなに集まった」と言 って企業が喜ぶからではなく、企業は企業で「本当に正当な寄付行為」かを 国税に対して証明したほうが安全、だから「原本」が必要だと、国税OBな どの税理士に脅迫されているからだと思います。  日本の生産性を壊滅的にして国を滅亡に追い込む「原本大好き主義」がこ こでも顔を覗かせているわけです。それはともかく、ありとあらゆる実務、 商品の包装に印刷された「企業番号と点数入りのベルマーク」にしても、企 業別の封筒から、PTAのベルマーク委員を経験した人が誇らしげにアップ している「『便利』な集計台紙のPDF」にしても、このシステムの隅々に、 日本終了の死臭がプンプンしています。  それ以前の問題として、全国の学校におけるPTAの「ベルマーク委員」 は大変です。本当に昭和時代のチマチマした事務仕事に、貴重な時間を奪わ れているのですから。その苦痛の総体というのは、筆舌には尽くし難いと思 います。  こうなると、ベルマークというのは、子供に対して「もうこの国にいては 未来はないよ」ということを教育するためにやっている、冗談ではなく本気 でそう思います。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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