松尾スズキの【のっぴきならない日常】vol.522（２／２）

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ / ２０２２年７月８日発行 /Ｖｏｌ．５２２（２／２） ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 「人生に座右の銘はいらない」 読者からの相談や質問に松尾スズキが独自の視点でお答えします！ Ｑ．知人の居酒屋がコロナ不況に耐えきれず廃業してしまいました。隣のビルに入っているバーは緊急事態宣言のときの時短要請中も隠れて営業して、ほかにやってる飲み屋があまりなかったので、結果的にボロ儲けしたようです。友人は正直に時短要請を守って潰れたのに、なんだか切ない気持ちになります。世の中、やっぱり、そういうものなんでしょうか。（３０歳、女性） Ａ．隠れてできないのが演劇のつらいところで、いまだにやたらＰＣＲ検査をして無症状の陽性者を炙り出し、結果、公演中止の憂き目を見ている舞台の話を聞くと、いたたまれない気持ちになります。とはいえ、うちも『ドライブイン カリフォルニア』、一週間とあけずＰＣＲ検査をしておりました。意識高い系の俳優さんが集まった故なのかなんなのか、本日、最後の検査でも全員陰性。 なんとか陽性者を出さずフィニッシュできそうです。しかし、これも運としか言いようがありません。ギャンブル的、とも。しかし、芝居を打つのをやめるカンパニーもいないというのが、すごいです。結局、やるしかないのです。これが職業なのだから。パルコもコクーンも、何度も陽性が出て公演を一旦停止したり、全面停止にしたり、それでも芝居を続けるのです。もちろん、うちも。正直にやる以外ないので、相当疲弊していると思います。ＰＣＲ検査も、自分で口に綿棒突っ込んでやるのですが、正直、適当に突っ込んでもバレやしまいと思うのですが、なんだかバカ正直に、ていねいに「おえっ」となるまで突っ込むのです。『松尾スズキと３０分の女優』でも、何度も何度もやっておりました。ああも多くの芸能人が陽性になっているのに、阿部ですら罹っておるのに（阿部は、ああ見えて病気に関しては怖がりだとふんでいます）、自分がならぬのが不思議でなりません。真面目な感じに一切見えない古田新太が陽性になってないのも納得いきません。 Ｑ．先日、高校時代の同級生と飲んでいたとき、私が好きな女の子に気にしてもらいたいあまり、「実はクォーター」だという、ありもしない嘘をついていたことが判明しました。私には高校生の息子がいますが、もし彼がそういうことを言っていれば、微笑ましく思うのでしょうが、自分のこととなると恥ずかしすぎて死にたくなりました。恋は盲目とは言いますが、松尾さんは恋愛において「思い出すのも恥ずかしい」記憶ってございますか？　ちなみに例の話を妻にしたところ、「思春期の男って信じられないくらいバカよね」と笑っていたのですが、「で、私にはどんな嘘ついてんの？」と、なんだか不穏な空気が漂いました……。彼女に嘘は、ついてないと思うのですが……。（５２歳、男性）