30年までに空母5隻体制も
経済は軍拡に耐えられるのか
近海防衛から海外攻撃を狙う
同盟なしは始皇帝以来の外交
中国は6月、3隻目の空母「福建」(総排水8万トン)を進水させた。これで、「遼寧」、「山東」(共に総排水6万トン)と比べて、一回り大型の空母となった。
「福建」は、艦載機を発射させる上に必要なカタパルト(発射機)で電磁式を採用した。米空母に次ぐ新機軸である。これまでの先行2空母は、いずれもスキー・ジャンプ台のような傾斜を利用したものだ。この変形から脱して、艦載機は平面甲板から飛び立てるようになる。
空母は、移動する基地と称せられている。中国空母は、「福建」を含めて通常動力(エンジン採用)である。定期的に燃料補給を受けなければならない。戦闘中に、そういう事態になれば、海上で補給を受けるしかない。それを敵機に妨害されれば、「海上の浮遊物」になる恐れが生まれる。空母は、見る姿は威風堂々としているが、戦場においては潜水艦やミサイルの攻撃対象になって、厄介な存在になるのだ。
「福建」は、前記の通り電磁波カタパルトを採用しているが、大量の電力を消費する点でマイナス要因である。それだけに、通常動力の空母での使用時間に限りがある。こういうリスクを抱えるカタパルトを採用する目的はなにか。軍事専門家は一様に首を捻るのだ。最近、浮かび上がったのは、電磁波カタパルトを使って、ドローンを一時に大量に飛ばすのでないかというのだ。
2019年7月、暗闇に包まれた米カリフォルニアの海岸線から100マイル(約160キロメートル)も離れていない場所で、4つから6つほどのドローン集団が、米海軍の艦船を追跡する事件が起こった。ドローン集団が、船首の上を旋回しながら帰投したのだ。その後の米海軍の調査で、付近を航行した船舶は、香港を旗艦とするパシフィック・ベイスンが所有・運航していたものと判明。つまり、中国軍と密接な関係を持つ船会社所有の船舶であった。
中国が、空母を使って複数の無人航空機(UAV)を大量に飛び立たせ、敵を攻撃するのが「コスパ」から見て得策なのか。極めて疑問である。空母は、一隻で行動するものでない。潜水艦・巡洋艦・駆逐艦など「打撃群」を擁する空母部隊の編成が必要になる。こういう点から考えると、中国がどういう軍事戦略なのか、謎が深まるばかりである。
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