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週刊 Life is Beautiful 2022年7月12日号:中学生にも分かるWeb3、ガバナンストークン

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 中学生にも分かるWeb3-8(メルマガ限定) ガバナンス・トークン ガバナンス・トークンとは、文字通り、ガバナンス=統治のためのトークンで、株式会社でいうところの「議決権付き株券」に相当するものです。主にDAO(Decentralized Autonomous Organization)が関わるところで使われ、DAOのガバナンストークンを持つ人はDAOのオーナーであり、DAOの経営に直接口を出せることを意味します。 Nouns DAO が良い例で、毎日オークションで売りに出される Nouns NFT が Nouns DAO のガバナンストークンであり、オークションの結果集まったお金の使い道は、DAOのメンバー、すなわちガバナンストークンの持ち主による投票で決まります。 通常の会社と異なるのは、経営陣や取締役に相当する人たちがおらず、すべてがDAOのメンバーの直接投票によって決まる点です。 DAOは、まだ実験的な組織形態ですが、それが通常の株式会社より本当に優れているかどうかは、まだ誰にも分からず、「もっともDAOらしいDAO」と呼ばれる NounsDAO に実際に入って活動している私自身も大いに疑問を感じています。 にも関わらず、Web3ベンチャーにより、ガバナンストークンが幅広く活用されているのには、一つのはっきりとした理由があります。ガバナンストークンは、(創業者にとって好ましくない)希薄化を伴わない、安価な資金調達手法だからです。 Web3以前は、ベンチャー企業が資金集めをする唯一の方法は、株の発行でした。ベンチャー企業の創業者は、運営資金の確保のために、VC(ベンチャー・キャピタル)に向けて、ビジョンやビジネスプランを熱く語り、ようやく気に入ってもらえたところで、株の価格交渉に入ります。 上場企業と違って、未上場ベンチャーの株価は、買い手であるVCと創業者の二者の間の交渉で決まります。2億円の資金調達する場合、投資家が企業に8億円の価値があると認めてくれれば、20%の希薄化で済みますが、2億円の価値しか認めてもらえなければ、50%の希薄化になってしまいます。 そのため、ベンチャー企業の経営者は、「より多くの資金を集めたいけれども、大きな希薄化は避けたい」という微妙なバランスのもとに資金調達をしなければなりません。 さらにVCは、株式の購入の際に「優先権」を求めてくるため、これにも注意が必要です。典型的な優先権の一つが、「企業買収の際には、優先株を持っている人は支払ったお金の3倍を先にもらう権利がある」のようなものです。 70億円の企業価値を認めてもらって、そんな優先権のついた優先株で30億円を調達した企業が、事業の半ばで資金繰りに困って、100億円で買収された場合、優先株の持ち主が90億円(30億円の3倍)を先に持って行ってしまうため、創業者には10億円しか入って来ないのです。 それと比べると、ベンチャー企業が発行するガバナンストークンは、会社の株ではなく、特定のサービス(例えば Play2Earn ゲームサービス)の一部を売却するだけなので、株の希薄化は起こりません。 さらに、ガバナンストークンを売る相手は、プロの投資家(VC)ではなく、一般消費者なので、優先権を与える必要もないし(優先権の存在を知らない人が大半です)、サービスの価値に対しても盲目です。 多くのWeb3ベンチャーは、ローンチしたばかりのPlay2Earnゲームのガバナンストークンに適当な値段を付けて販売しますが、その値付けはベンチャー側が一方的に決めたものなのです。 にも関わらず、そんなガバナンストークンが売れてしまうのは、消費者がその手の金融商品に投資するリスクを理解していない上に、「適正な価格」を判断する基準さえ持っていないからです。 Web3ベンチャーは、しばしば「初期のiPhoneを購入した人や、Youtubeに最初から映像を投稿したいた人たちには、AppleやGoolgeは何も恩返しはしておらず、もうけたのは株主ばかり。Web3ベンチャーが発行するガバナンストークンは、初期のユーザーに株主と同様のキャピタルゲインというメリットを提供する」と主張しますが、これはとても危ない発言です。 日本や米国には、「出資法」と呼ばれる「出資詐欺」を禁止するためのしっかりとした法律があり、これによって、消費者がリスクを理解せずにベンチャー企業に出資して損をしてしまうことを防止するための法律です。 「キャピタルゲインというメリットを提供する」ガバナンストークンは、まさにこの出資法の規制対象であり、その場合には、出資法に基づく情報開示が必要であり、欲に目がくらんだ消費者にガバナンストークンを高値で売りつけることは、出資法違反に該当する可能性が高いのです。 さらにその手のWeb3ベンチャーは、「将来は、より多くのガバナンストークンをユーザーに渡し、DAOとして、ユーザー自身が運営する Decentralized なサービスにするつもりだ」と主張しますが、これもかなり出鱈目なセリフです。 上に書いた通り、多数決で運営するDAOはまだまだ実験段階にあり、それで成功した例はまだありません。特に Play2Earn ゲームのような、新規ユーザーが無限に増え続ける場合にのみ成り立つポンジスキームにおいて、経営をユーザーに任せたら、ユーザー間で強者が弱者を搾取するような修羅場になりかねません。 ということで、私はガバナンストークンをユーザーに売りつけるようなベンチャー企業は信用すべきではないと感じています。大量の被害者を出した、ICOブームと同じ匂いがします。 On-chain Asset Store 開発して来た On-chain Asset Store がようやく code complete (開発のプロセスにおいて、当初予定していた機能を全て実装し終わったこと)を迎え、ベータ版を一般公開し(https://assetstore.wtf/)、最終チェックをしている段階です。 ソフトウェアは、複数のスマートコントラクトとWebUIから構成されていますが、コアのスマートコントラクト(AssetStore.sol)は更新が出来ないので、入念なテストが必要です。 ソースコードは、以下の場所に公開してあります。スマートコントラクト:https://github.com/Cryptocoders-wtf/assetstore-contractWebUI:https://github.com/Cryptocoders-wtf/assetstore 全体のアーキテクチャを表したのが下の図です。 AssetStore が中心的な役割を果たすコントラクトで、これがさまざまなアセット(ベクトルデータ)をしまうデータベースの役を果たします。このコントラクトは一度デプロイしたらアップデートは不可能で、最も丁寧な設計・実装が要求されます。 StringValidatorとSVGPathDecoderは、補助的な役割を果たすコントラクトで、この二つに関しては、アップデートが可能な設計になっています。

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