メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

第40回:国際会議など外交の動きでビジネスの課題を解決するために ~グローバルヘルスの例~

政策人材のための教科書 ~現場の声を政策につなげるために~
  • 2022/07/13
    • シェアする
1)2023年のG7サミットは大きな政策変化がありうる 政策が大きく変わるタイミングには、政権与党の選挙公約、官邸の強い意志、議連などの働きかけ、大きな事件の発生、裁判の判決などがあげられますが、大きな国際会議や首脳会談なども大きな政策変更のきっかけとなりえます。 会談や国際会議の場は、参加するほかの国が驚くような新規性のある政策を示し、日本の国際的な立場を高めるためにも使われるからです。例えば安倍首相が首相を務めていた2013年に開催された第 5 回アフリカ開発会議で日本はABEイニシティブを発表しました。これは、アフリカの若者を日本に留学させ、大学院での教育や日本企業でのインターンシップの機会を提供するプログラムでした。この政策決定を受けて、JICAなどがアフリカ人材を日本企業や大学で受け入れるための支援を行いました。 これから予定されている大きな政策変更の可能性がある国際会議が2023年5月19日(金)~5月21日(日)に広島で行われるG7広島サミットです。G7サミットはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダそして日本の首相などが参加する国際会議です。首相間の会議のほか、各省大臣間の協議も行われるので、個別の政策テーマについても議論されます。 G7ではグローバルヘルスに関連する政策についても特筆すべき政策が打ち出されることも多く、2016年のG7伊勢志摩サミットでは「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」が発表され、安倍首相から公衆衛生危機対応,感染症対策やUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の達成に向けた保健システムの強化等の観点から、今後新たに約11億ドルの支援を行うことが宣言されました。 先ほど触れたように、国際会議の場は日本の存在感を示す場なので、日本が何も新しい政策を打ち出さないというわけにはいきません。さらに2023年のG7広島サミットは日本が議長国であることもあいまって(しかも岸田首相のおひざ元です!)、新規性のある政策発表が期待されます。グローバルヘルスに限りませんが、国際的に取り組む価値のある政策を実現したい場合は、2023年5月のG7に狙いを定めた政策提案を今すぐ始める必要があります。 これから想定される分かりやすい例を挙げてみましょう。グローバルヘルスの文脈で2023年のG7広島サミットで議論されそうなテーマとして、薬剤耐性問題があります。骨太の方針2022では、下記の記載がされています。 「薬剤耐性対策において市場インセンティブなどの薬剤耐性菌の治療薬を確保するための具体的な手法を包括的に検討した上で結論を出し、国際的な議論において主導的な役割を果たす。」 ※ 薬剤耐性はAMR(Antimicrobial Resistance)と呼ばれ、細菌が経年変化することで徐々に抗菌薬の効果がなくなっていくことを指します。抗菌薬の開発には多額の費用が必要となる一方、薬剤耐性の対策の一つが、安易な抗菌薬の使用抑制でもあることから、単純に使用量や販売量に応じた収益の期待ができません。そのため、売り上げとは別に製薬企業が収益を得られるようなインセンティブの必要性が近年主張されています。 参考:AMR Alliance Japan【政策提言】抗菌薬市場におけるプル型インセンティブ制度の導入に向けて(2021年3月24日) 2023年のG7広島サミットは、骨太の方針に記載されている「国際的な議論において主導的な役割を果たす」ための絶好の場でしょうから、薬剤耐性問題については、2023年5月に向けて政府内で急ピッチの政策議論が進められていくことが予想されます。 重要な国際会議などの外交の場が、国内の政策にも大きく影響を与えることが、お分かりいただけましたでしょうか。 2) 国際機関での医薬品等調達強化も2022年の重要テーマ

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 政策人材のための教科書 ~現場の声を政策につなげるために~
  • 元官僚で千正組の 千正康裕と西川貴清が「政策のつくり方」「民間からの政策提言 のコツ 」についてお届け。(発行日はあくまで目安です。) こんな方々にお勧め。1)企業や民間団体で政策や行政に関わる仕事をしている方 2)公務員や議員など政策をつくる仕事の方 3)将来、政策をつくる仕事をしたい 方 4)政策について高い関心を持たれているすべての方。
  • 2,000円 / 月(税込)
  • 不定期