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【Vol.439】冷泉彰彦のプリンストン通信『権力の空白という異常な夏』

冷泉彰彦のプリンストン通信
<Q&Aコーナーより> (Question) 「各地方が現役世代による21世紀の社会における経済活力」を維持する” とても惹かれるフレーズだったので、意味を詳しく教えて欲しいです。 私は数年前に都内から地方に転勤で引っ越したのですが、「日本の問題」と 言われているものの多くは、「東京に人が集まり過ぎている」ことにあるの ではないか、とぼんやり感じています。 (Answer)  このフレーズですが、5つの意味合いを込めて申し上げています。  1つは、地方の人口構成です。高齢化・過疎化が一巡すると人口空白にな ってしまいます。地方のコミュニティを維持するには、現役世代の人口を増 やして行かねばなりません。例えばですが、地方の言語、地方の食文化、地 方の祭礼などの行事といった無形の文化は、そうでなくては維持できません。 仮に、そうした文化が消滅するとすれば、日本国内の文化的多様性は失われ て、高度付加価値産業の展開にはマイナスになります。  地方が本当に持続するには、とにかく現役世代の人口を高めていくしかあ りません。思いつきレベルの移住とかではなく、組織的に「地方に住んだ方 が得をする」政策をどんどん投入すべきです。  2つ目は、地方経済です。補助金や、ふるさと納税などでゾンビ状態の経 済を維持しても何にもなりません。とにかく経済が回る、そのためには何を したらいいのかを必死に考えないといけません。  3つ目は交通インフラです。まず、空港、新幹線、高速道路の3点セット を金太郎飴のように要求するのを止めることです。これを続けると、まず在 来線が成立しなくなります。次に、交通の便が「人口と経済の流出」を引き 起こしてしまいます。そうならないための戦略を必死に考えるべきです。  4つ目は、時代との兼ね合いです。地方が現役世代にとって魅力ある場所 になるためには、東京より地方が先行していなくてはなりません。DXに失 敗している東京を横目に、地方がどんどん先行するとか、ジェンダーギャッ プも地方が先へいく、国際化も地方がダイレクトにアジア、欧米と結びつい て東京を引き離していく、そうした発想というか行動です。  欧米とアジアの劣等感にまみれつつ、地方を見下してきた東京に対して、 一気に逆転して引き離してゆく、これが地方が生き残るための条件だと思い ます。  5つ目は、言葉でごまかさないことです。衰退に対抗することを「創生」 と言い換えたり、限界集落を「生き生き集落」と言ってみたり、見苦しいだ けだと思います。問題を直視し、変えなくてはならないことは変えるという 誠実な姿勢がなくては、コミュニティの改革はできないのです。

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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