1. 2000億市場を生み出しているデータヘルス
日本には資源がない、といわれますが実は豊富に蓄積されている資源があります。
皆さんの健康に関するデータです。
皆さんが病院に行き、薬局で薬を出してもらった場合、病院と薬局はそれぞれ皆さんの治療情報、投薬情報をレセプトという媒体に記録します。
このレセプトの記載をもとに、医療保険の運営主体(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険組合など)が病院や薬局に医療費を払い込む(皆さんが窓口で払うのは通常3割で、残りの7割は医療保険から払われます)という仕組みになっています。
診察日、検査の内容、診療行為、処方薬の内容など幅広い情報が記録されているレセプトデータに加え、健康診断で計測された各種診断結果や介護保険の利用データなども同様に保管されています。他にもゲノムデータを蓄積している専門の機関もあります。
これらのデータは未来の政策を考えるために利用されています。例えば健康診断後に特定の健康サポートを受けると、健康診断の数値がこれだけ改善する、などということがわかれば、「じゃあその健康サポートを推進する政策を進めよう」という判断がされるからです。
これらの公的データやその他の民間団体が集めたデータを分析し、個人の健康状態に即した効果的なアプローチを行うことをデータヘルスとよんでいます。
このデータヘルス、ビジネスの視点からも重要領域になっています。これらのデータ解析や介入については、自治体や健康保険組合だけでは企画立案することが難しいので、専門の会社がデータ分析をしたり、介入内容を考えたりする支援をしているからです。
このような支援を含むデータヘルス関連の市場規模は、2023年度には2,240億円にもなるとする市場調査会社の推計もあります。近年は、公的データに加えて、スマートウォッチをつかった健康管理などの分野にも市場が拡大し、順調に成長している分野といえます。
2.データヘルスは医療費適正化効果が薄いとして見直しの岐路に
このデータヘルス、日本の財政健全化政策の一環という側面も持っています。
データヘルスが日本の政策に登場してきたきっかけは2006年の医療保険制度改革です。小泉政権下で医療の歳出削減が進められるなかで、伸び続ける医療費を今後どうやって管理するかが議論のお題に上がりました。
当初は財務省などが主張するGDPに連動した医療費目標を設定する方向で議論が進められました。
でもこの案を採用すると、GDPの伸び以上に医療費を使うことができなくなります。国家財政上はよいことですが、地域の病院が閉鎖したり、良い薬が日本に入ってこなくなったりするなど、必要な治療が受けられなくなるリスクもあったのです。
最終的には、厚労省が主張していた生活習慣病の予防を進めることにより結果として医療費を下げる案が採用されました。
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