メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

弱小病院が研修医2桁フルマッチを目指す その1

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室151.2022.7.31. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php **************************** 弱小病院が研修医2桁フルマッチを目指す その1 “人は掘 人は石垣 人は城”病院経営も全くその通りで設備はお金をかければ何とでもなりますが、人はそうではいきません。忠誠心の高い優秀な医師がいてこそ、その病院は盤石になるのですが、我々のような弱小病院にはそもそも医師が来ません。そこで数年は辛くとも、10年計画で優秀な研修医を採用し、優秀な医師に育てることが大切であると痛感しています。 院長就任1年目です。私の最大の存在意義は、松阪市民病院で働く優秀な医師を養成することにあると思っています。そのためには優秀な研修医をリクルートすることから始まります。タイトルにこのようなことを書いてしまったので、後には引けません。ぜひ、来年度からは2桁フルマッチを現実のものとする。(本年度は難しいかも・・・でもひょっとしたらという期待は少しだけありますが。) 先日、日経ビジネスを読んでいたら、このようなタイトルの記事が目につきました。“無名のベンチャーなのに、東大や京大生が続々入社したあの会社の作戦”無名のベンチャーと言っても、今はもう無名のベンチャーではありません。45年前は無名のベンチャー、しかし今は泣く子も黙る“リクルート”の作戦です。 私は、まず文章に惹かれました。人材を募集するのに“考えられる全てのことはやりました。アイデアは出し尽くしました”とみんな言いますが、それは全くやっていなかったと言うのです。“少子高齢化で構造的に採れない”それは全く嘘で、30年前と比較すると大学生は6割増えています。ホワイトカラーには当てはまりません。“人材の質が落ちた”これも嘘。昔は女性の大学進学率1割で、しかも多くは家政科でした。人口の半分の女性労働力を無駄にしていたのです。優秀な女性が活用できるようになったことを考えると、目に見えて質は落ちていません。 これはそのまま医学生にも当てはまります。その上、医学生の場合は国の方針で都会での研修にシーリングがかかり、構造的にどんどん地方に流れて来るようになっています。そんな中、三重県には医学生が流れて来ないのは何故か、真剣に考えなければいけません。 さて“リクルート”が無名時代、東大生や京大生を2桁採用した方法はどんな方法だったか紹介したいと思います。1970年代、当時の日本は右肩上がりで重厚長大産業にばかり目が行き、パッと出の“リクルート”は見向きもされませんでした。そんな中でも“リクルート”は大学生にアルバイト募集のハガキを出していました。しかも時給が600円の時代、1,000円以上の時給でアルバイト募集を行っていました。多くの学生には見向きもされない(多くの優秀な学生は重化学工業、都銀、証券会社、国家公務員等を目指していました。)が、ニッチな部分では需要があり、少数の学生がアルバイトに訪れました。 アルバイトはハガキの整理やデータ入力など簡単な業務ですが、手際が良かったり、周囲との関係性が良い学生はさらに高条件でアルバイトを持ちかけられました。営業同行やオフィスの手伝い、そこで若くして出世していった大学卒業OBの薫陶を受け、そして優秀な学生をゲットし、会社は発展する。とまあ、他社では全くやらない手法を編み出したのです。忠誠心が高い優秀な社員のおかげで、リクルートは世間からバッシングを受けても耐え抜き、常に成長し続けました。そして今もなお、日本の為になる人材を排出し続けています。 私の目標は、例え松阪市民病院が逆境に陥ろうと、支え続けることができる忠誠心の高い優秀な医師を育て、そしてその医師達が歳を経てからは、三重県、いや日本の医療に貢献してくれる人材となってくれることです。 松阪市民病院呼吸器内科に赴任した最初の10年間、私1人の赴任でした。圧倒的多数の呼吸器内科症例があったにも関わらず、何度頼んでも三重大学から呼吸器内科医師は派遣してもらえず、松阪市民病院研修医から呼吸器内科に来てくれる医師はいませんでした。当時の私は、大学にとっても病院にとっても、偉そうなことばかり言う小生意気な奴に映っていたに違いありません。当時の三重大学呼吸器内科長田口教授と先先代の松阪市民病院小倉院長にはお詫びしたいと思います。“若気の至りで許してね。”と。 そんな中どうしたのか、三重大学医学部4年生の臨床実習で呼吸器内科にまわって来てくれた学生がいました。彼らにデータ整理のアルバイトを持ちかけ、呼吸器内科治験費を原資に病院の事務所に頼み込み、アルバイト代を出して貰い、夏休みや冬休み問わずアルバイトに来てもらいました。“リクルート”と違い時給はあまり高く払えませんでしたが、アフター5に自腹で散々ご馳走し、“将来は松阪市民病院呼吸器内科に来てね”と口説きました。戦力となるまで10年計画でした。打率は強打者程度でありましたが、卒業と同時に松阪市民病院研修医になり、今では松阪市民病院呼吸器内科の中心として働いてくれている医師もいます。私が行ってき方法と“リクルート”の方法“一致する部分があるやんか!”と驚いた次第です。 期を同じくして、ようやく三重大学から呼吸器内科医師を1人派遣してくれることになり、また松阪市民病院研修医から1人呼吸器内科に入ってくれることになって松阪市民病院呼吸器センターが誕生しました。たった3人からのスタートでした。最初の松阪市民病院研修医上がりの医師は、現在、多くの論文を書き、講演会で招かれ全国を飛び回っています。まさに“青は藍より出でて藍より青し”であります。その後、松阪市民病院櫻井前院長の娘さんが合流してくれたり、人が増えると余裕ができ、また松阪市民病院研修医が入ってくれたり、三重大学呼吸器内科からも派遣してもらえたりして、現在呼吸器内科10人、呼吸器外科2人で呼吸器センターを運営しています。松阪市民病院呼吸器内科医師が増えていく過程に於いては、櫻井前院長のお力添えが大きかったと思っています。足を向けて寝られない筈なのですが、顔を見ると文句しか言わないこんな私でも、彼は広い心できっと許してくれるだろう・・・と思っています。ごめんなさい。 次号へつづく・・・ ************************ ドクター畑地の診察室151.2022.7.31号 毎週日曜日お昼に配信します。 次号は2022.8.7.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 ***************************** ★お知らせ★

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • ドクター畑地の診察室
  • 現役呼吸器内科、総合内科専門医のメルマガです。世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信!
  • 220円 / 月(税込)
  • 毎週 日曜日(年末年始を除く)