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石川 温の「スマホ業界新聞」
2022/07/30(vol.477)
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《目次》
1.加入者DBが輻輳しても「緊急通報ローミング」できるのか
-----高橋社長「仮想化の世界なので可能性はあるのではないか」
2. au通信障害、なぜiPhoneは音声がダメでもデータ通信は使えたのか
-----高橋社長「iPhoneとAndroid、機種によって振る舞いが違う」
3.フランス発の中古スマホ市場「Back Market」日本上陸
-----「ネットでリファービッシュを買う」は当たり前になるのか
4.今週のリリース&ニュース
5.編集後記
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1.加入者DBが輻輳しても「緊急通報ローミング」できるのか
-----高橋社長「仮想化の世界なので可能性はあるのではないか」
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今回のau通信障害によって、注目を集めているのが、緊急通報のローミングだ。キャリアで通信障害が発生したとしても、他社の回線に接続することで、110や119をかけられるようにするというものだ。海外では導入されており、日本でも2011年の東日本大震災後に検討課題となっていたが「キャリア毎に通信規格が異なる」ということで、断念されてしまった。あれから10年以上が経過し、どのキャリアでも同じiPhoneやAndroidスマートフォンを採用している。通信規格や端末面において、過去よりも導入はしやすくなったはずだ。
緊急通報のローミングを導入する上で目下の課題が2つある。まず技術面において、そもそも、キャリアのネットワークがダウンしている中、他社回線に接続できたとしても、契約しているキャリアの加入者データベースに接続する必要が出てくる。しかし、ネットワークがダウンしているのに加入者データベースにアクセスするというのは無理がある。
その点をKDDI高橋誠社長に尋ねたところ「例えば加入者交換機だけ分けるとか、仮想化の世界なので可能性はあるのではないか」ということだった。すべてのキャリアの加入者をまとめて管理するのか、これまで通り、キャリア毎に管理するかは別として、高橋社長からは「仮想化」というフレーズが出てきたのは注目であった。
確かにこれまでの常識では導入は考えずらかったが、これから「仮想化」が当たり前になってくると、ひょっとして導入できる可能性もあるのではないか、とわずかながら光が見えてきた感もある。
もうひとつの課題が運用面だ。高橋社長は「119番の場合には呼び返し、これは119番で火事ですっていったときに、電話が途切れたときに、向こうから呼び返しする仕組みがある。(通信障害時は)呼び返しができなくてもローミングを提供しようとか、様々な選択肢の中で議論が進むのではないか。われわれとしてもこれは積極的に実現したい」と語っていた。
全国には、地方の消防署など、緊急通報を行う箇所が700以上あるとされている。本来、緊急通報はかけてきた相手に対して、受けた場所から呼び返しができなければならないという決まりがある。このルールがあるために、これまでローミングによる緊急通報が実現しなかったのだが、今後、検討次第では、通信障害が発生しているタイミングだけは、ローミングを提供し、呼び返し機能がなくても緊急通報できるようなルールに変えていく必要がありそうだ。
いずれにしても、今後も大きな通信障害が発生する可能性は充分にあるだけに、総務省にはキチンと導入に向けて議論を進めてもらいたいものだ。少なくとも転売ヤーの撲滅よりも、優先度は高いはずだ。
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2. au通信障害、なぜiPhoneは音声がダメでもデータ通信は使えたのか
-----高橋社長「iPhoneとAndroid、機種によって振る舞いが違う」
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今回のau通信障害で個人的に興味を抱いたのがスマートフォンのOSによって障害の度合いが違ったという点だ。7月3日の会見で高橋社長は「Androidはデータ通信、音声ともダメだったが、iPhoneはデータ通信は利用できているようだ」と語っていた。確かに自分がau回線で使っているiPhoneもデータ通信はできていた。
「なぜ、AndroidとiPhoneで挙動が違うのか」
この点に関して、通信障害発生直後にメーカー関係者に取材したところ「うちでも検証段階だが、AndroidはSnapdragonでアプリケーションプロセッサとモデムが一体となっているが、iPhoneは別々。
本来、VoLTEが接続されてからデータ通信ができるようになるが、AndroidはVoLTEが接続できず結果、データ通信もできなかった。しかし、iPhoneの場合はモデムが独立しており、VoLTEがつながらなくても関係なく、データ通信ができたのではないか」という仮説を立てていた。実際、Wi-FiルーターなどVoLTEと関係ないものはデータ通信ができていたので、かなり信憑性があったのだ。
しかし、後日、この仮説に対して、物言いが入った。
別の業界関係者から「Androidが音声もデータ通信もできなかったのはKDDIのキャリア仕様をきっちりと守っていたから。その点、iPhoneはKDDIの仕様に対応していない。一方、AndroidもIOT(相互接続性試験)を受けていないものはデータ通信ができていたようだ」というタレ込みが寄せられたのだった。
では、実際のところ、AndroidとiPhoneで何が違うのか。7月29日の会見で高橋社長に質問したところ
「今回、データサービスをつかさどってる設備には不具合はまったくなかった。VoLTEの交換機が障害中であってもデータ通信が可能な状況であった。
一方、また、通常時の位置登録件数も、異常時と比較しても同じであり、全ての移動機のデータに対しての課金情報というのが残っている。
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