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佐々木俊尚の未来地図レポート 2022.8.1 Vol.715
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【今週のコンテンツ】
特集
「自分はピュアである」と信じることが戦後社会の諸悪の根源だった
〜〜〜「表現の自由」問題と人道派の性暴力事件をつなぐものとは
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
「自分はピュアである」と信じることが戦後社会の諸悪の根源だった
〜〜〜「表現の自由」問題と人道派の性暴力事件をつなぐものとは
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いまの日本社会は、「ピュアであること」「清浄であること」という強迫観念が貼りついているように感じます。それが性産業の排除や、ポルノやアニメなどの「表現の自由」を制限しようとする動きにつながっているのではないでしょうか。
しかし不浄で猥雑なものを切り離して、ピュアで清浄なものだけが存在する社会というのはあり得ない。もし現実にあるとしたら、それは「退廃芸術」を排除しようとしたナチス全体主義のような清潔なディストピアでしかないでしょう。
このメルマガを書いている間にちょうど、現代アーティスト会田誠さんの新著『性と芸術』を読了しました。
★「性と芸術」 (幻冬舎)
https://amzn.to/3b6w9ES
これは会田誠さんのスキャンダラスな問題作とされる「犬」シリーズをみずからが解説されている本です。
★犬(雪月花のうち“月”) | thisismedia
https://media.thisisgallery.com/works/makotoaida_15
不快になる人もいると思うので閲覧注意ですが、ことばで端的に説明すれば「手足を切断され犬のように首輪をつけられた美少女」です。犬シリーズは1980年代末から断続的に制作されていますが、2013年に森美術館で展示された際には、「ポルノ被害と性暴力を考える会」という市民団体からクレームがついて騒ぎになりました。
森美術館での展示は会田さんの個展「天才でごめんなさい」の一環で、18歳未満入場禁止とし「ショッキングな内容を含みます」という注意喚起の表示もおこなってゾーニングされた特別な小部屋を用意し、その中に「犬」を含む性的刺激が高めな作品が展示されたそうです。
2013年のこのときはすでにツイッターが普及しており、会田さんのツイッターもなかば炎上気味になってしまいました。会田さんはこの時、以下のようにツイートしています。
★「言うまでもなく『犬』は『お芸術とポルノの境界は果たして自明のものなのか?』という問いのための試薬のようなものです。問いをより先鋭化するため、切断や動物扱いという絶対悪の図像を選択しました。多くの人が指摘する通り、このたびの喧々囂々の議論は、最初から作品に内在していたものでしょう」
https://twitter.com/makotoaida/status/296101057447227392
「性と芸術」によると、このときにネットで会田誠さんを擁護した人がおり、「会田の作品は芸術ではあってポルノではない」と発言。これにポルノ愛好家が反発する場面があったとか。それを振り返って会田さんは同書でこう述懐しています。
「その時の私の引き裂かれた複雑な心境は、この文をここまで読んでくれた人なら分かるだろう」
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