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【死んでも書きたい話】 「秩序の維持」が狙いの宗教の危険性

安田純平の死んでも書きたい話
暑い日が続いていますがいかがお過ごしでしょうか。 ミャンマーで取材中のドキュメンタリー作家、久保田徹さんが当局に拘束されたとの報道があります。その後の動きはまだ出てきていないようですが、正体不明の武装組織などではないので即座に危険な状態になることはないだろうと願っています。 武装組織相手の場合は「テロリストとは交渉しない」という原則になりますが今回は「国家と国家」という一応の表の世界の関係であり、日本政府として対応が必要だし可能です。政府によって拘束がされるような国とは付き合いようがありません。他の日本人の安全と、日本という国としてナメられないためにも厳しい抗議をしながら確実な救出をはかるべきです。 武装組織の場合は報道などで公にすることのメリットは何一つありませんが、いちおうの国家が相手であれば表立ったかたちでの抗議もプレッシャーになるので、SNSなどで友人知人中心に情報が拡散されていることはよいことだと思います。 「自己責任」うんぬん言う人々がいつものようにいるようですが、救出を試みることは本人だけのためではなく、それができる政府であることが他の日本人の安全につながるものであり、本人の「責任」だけで完結させて放置してよい話ではなく、本人に「責任」を追求すべきことでもありません。 昨年拘束された北角さんの解放後の報告は興味深いものでした。きっと面白い話を仕込んで帰ってくることと信じています 元首相の安倍晋三氏が7月8日、参院選の遊説中に銃撃されて死亡しました。 容疑者は、旧統一教会の信者である母が1億円を超えるという献金をしてきたことで家庭が崩壊し、過酷な人生を送ってきたという背景があります。報道によると、安倍氏が旧統一教会関係のイベントで同教会の家族感などを称賛したことから、容疑者は安倍氏の殺害を決意したとされています。自民党と旧統一教会の関係は容疑者が犯行に至った大きな要因で、これを機に徹底的な解明と解消がされるべきです。 しかし、どのような背景があろうと人を殺す行為を正当化するものではありません。私個人としては、腹立たしい限りで許しがたい犯行です。 安倍氏は、2015年にISに殺害された後藤健二さん、湯川遥菜さんの事件、同年から3年4カ月間、シリアで拘束された私の事件の際に首相を務めており、政府はどのような対応をしたのか、しなかったのか、いつかは真相を聞きたいと思っていました。安倍氏がそれに応じる可能性があったかどうかは分かりませんが、亡くなってしまったことで可能性はゼロになってしまいました。まったくもって残念でなりません。 安倍氏の葬儀はすでに終わっていますが、政府は9月に改めて「国葬」を行うと発表しています。 岸田文雄首相は「国葬」とする理由として「「憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって総理大臣の重責を担い、東日本大震災からの復興や日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開などさまざまな分野で実績を残すなど、その功績はすばらしいものがある」と実績を強調し、「外国の首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、民主主義の根幹である選挙が行われている中、突然の蛮行で逝去されたことに対して、国の内外から幅広く哀悼や追悼の意が寄せられている」と述べました。 「国葬」は明治以降、国家にとって功績のあった政治家や軍人を対象に行われてきた国威発揚のための行事で、1926(大正15)年に「国葬令」が制定されて法的根拠が明文化されました。「国葬令」は戦後の1947(昭和22)年に失効しており、唯一行われた元首相の吉田茂についても異例のこととして議論があり、その後は行われていません。中曽根康弘については「内閣・自民党合同葬」であり、それでも半額を国庫から負担したことに異論が出ました。安倍氏が、殺害ではなく死亡していれば「国葬」という話にはならなかったと思われます。

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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