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弱小病院が研修医二桁フルマッチを目指す その2.

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室152.2022.8.7. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php **************************** 弱小病院が研修医二桁フルマッチを目指す その2. 前回からの続き→ 現在私は、松阪市民病院呼吸器センター長として呼吸器センターの運営、呼吸器内科診療を行うと同時に院長として病院の運営を担っている。今後の呼吸器センター長としての医師募集のあり方、院長としての医師募集のあり方を考えていきたいと思います。 まずは呼吸器センター長としての医師獲得についてお話します。地方の病院で魅力的な科を作り、人を集めることができるのは“地域医療もしくは総合診療”や“救急科”と相場が決まっているのですが、へそ曲がりの私はそれをよしとしていません。ハードルは高いですが、呼吸器内科として“都会に負けない豊富な症例”“国際的な新薬臨床試験への参加”“質の高い臨床研究”のこの3つを充実させ、優秀な呼吸器内科志望医師を集め、少なくとも現在の倍の20人にしたいと思っています。要するに、他では学べない専門的な臨床能力の取得とアカデミズムの追求を売りにして、めげない、やる気がある優秀な呼吸器内科医師を集めたいと思っています。 “都会に負けない豊富な症例”を得るために大切なのは、まずは地域との信頼関係の構築、特に地域医師会の先生方との信頼関係づくりです。そのためには、症例を紹介していただいたら必ず、来院のお礼の挨拶と結果報告の返事を迅速に返信すること、状況が落ち着いている症例は必ず開業医の先生のところへお返しするという、当たり前のことをしっかり行うことが重要であると考えます。またこの15年間、松阪以南、和歌山県新宮市に至るまで、毎年1回、当センターに患者さんを紹介していただいている先生方の診療所に出向き、直接挨拶させていただいて顔の見える信頼関係を築き上げるよう努力しています。 人口減少地域にあって、症例を集めるのは容易ではありません。松阪市内の症例だけでは不十分です。幸いにして呼吸器内科には、私以外にも全国的に講演会に呼ばれてスピーカーを行う医師が数名おり、講演会をきっかけに他県から紹介してくれることもあります。また紀南紀北地区、名張地区、伊賀地区、和歌山県新宮市、それぞれの地域中核病院で外来をさせていただいており、その関係での紹介も増えてきました。一般向けには、私のラジオ番組(肺、おさむに聴け!Radioを聴いてらんらんらん)やBOAT RACE津、松阪けいりんなどの冠イベントを通し、少しでも松阪市民病院呼吸器センターの知名度と呼吸器疾患の認知度を上げるよう努力をしています。 “国際的な新薬臨床試験への参加”では、COPDや喘息で実績を重ね、現在は肺癌の臨床試験を中心に気管支拡張症や非結核性抗酸菌症、肺炎、COPD、喘息などと10本以上の臨床試験を行なっています。最大の問題点は治験をサポートしてくれるCRC(Clinical Research Coordinator)が松阪まで来てくれないことです。しかし、それくらいでめげる私ではありません。時には強引に、時には頭を下げ、関係各所と交渉しながら自前でCRCを雇用すると同時に、松阪市民病院薬剤師は言うに及ばず、済生会松阪総合病院の薬剤部や松阪薬剤師会の会営薬局の協力を得て、それぞれから薬剤師をCRCとして派遣してもらうウルトラCを成し遂げ、どうにか軌道に乗せています。マイナーなドライバー遺伝子があった時、また既存の治療が行き詰まった時など、都会の癌センターまで行かなくても、松阪市民病院で治療が提供できるようしていくつもりです。 “質の高い臨床研究”では、WJOGやCJLSG、NEJ、TORG、LOGIKなど、日本全国の肺癌を中心とする研究機構に参加して共同でデータを作るとともに、m3.comやSONY、各製薬会社とも共同で研究を行なっています。また新薬臨床試験で得た治験費を原資に、NGSやデジタルPCR装置を独自に運営し、研究に用いています。毎年、松阪市民病院呼吸器センターがファーストネームの論文はIF(Impact Factor)15点を目標にしていましたが、ここ数年はその倍程度あります。馬鹿にならない論文掲載料や翻訳チェック料、今では1回10万円以上となった国際学会参加費や出張費も、病院の規定外(学会参加費補助は10,000円までなど)の部分では、治験費で賄えるようにしました。 上記3点を高いレベルでクリアして広く認知させることにより、ニッチなところ(大部分の優秀な学生は都会の大学病院や大病院を志望する)で、負けず嫌いで優秀な医師を集めたいと考えています。手前味噌でありますが、例えば肺癌に限定すれば愛知癌センターに若干負けてはいるし、間質性肺炎の分野では愛知県の公立陶生病院に勝てません。気管支鏡的処置の分野では国立名古屋医療センターに若干負けている可能性もありますが、各分野をトータルした市中病院呼吸器内科としての総合力では日本でも屈指のパワーがあると思っています。これもひとえに当院呼吸器センターの、個性派で1芸に秀でた優秀な医師達のおかげです。 次号へつづく・・・ ************************ ドクター畑地の診察室152.2022.8.7号 毎週日曜日お昼に配信します。 次号は2022.8.14.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください。 ◆2022年07月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2022/07

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