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第29回 ペロシ訪台で見えたのは米政治の混乱と民主主義の危うさだった

富坂聰の「目からうろこの中国解説」
 ナンシー・ペロシ米下院議長は、いったい何のために台湾を訪問したのだろうか。 報じられているように「台湾海峡の安全のため」とか、それとも「民主主義を守るため」だろうか。そんな額面通り受け止めているのは、いまや日本人だけかもしれない。  バイデン政権はペロシ氏の強行に対し、明らかに慌てていた。出発前、ペロシ訪台を質問されたジョー・バイデン大統領(7月21日)は「軍は良いとは考えていない」と記者に答え、ロイド・オースティン国防長官もペロシと話し合っていると伝えられた。だがペロシは「大統領は『ネガティブだと答えた』と会見で質されても、それを無視。最終的にホワイトハウスは「(訪台を)決めるのは議長自身」とさじを投げた。  議会では足元の民主党が沈黙気味となるなか、逆にライバルの共和党がいち早く訪台支持をした。不思議な現象だが、これは中間選挙を前に空から降ってきた「敵失」に付け込む動きだとの見方もされている。もちろん超党派という美名の裏でのことだ。  このドタバタを英誌『エコノミスト』(8月2日)は、〈ペロシの訪台はバイデン政権の支離滅裂な戦略の露呈〉と報じている。 現政権との齟齬を意識したペロシは、台湾訪問の有無を明言しない戦略に切り替えアジアへと出発した。この行動が習近平政権の猜疑心を刺激したことは言うまでもない。そして警戒心をむき出しにした中国の反応が、メディアの報道を過熱させた。

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