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【Vol.442】冷泉彰彦のプリンストン通信『バイデン復活のシナリオは?』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「どうして東京のエリート校は男女別学なのか?」  アメリカにも、世界にも女子校というのはあるわけです。女子校の位置付 けというのは割にハッキリしていて、社会的にはまだ女性の権利を拡大する 必要があり、女性に対して優秀な教育を集中的に行うことが目的とされてい ます。  アメリカの場合ですと、ニューヨークのバーナード・カレッジなど超難関 の有名校もあるわけですし、ヒラリー・クリントンの通っていたウェルズリ ー大学などは、相当にラジカルなフェニミストを輩出していることでも有名 です。  大学だけでなく、高校の段階でも、少人数で厳格な教育を行うための女子 校というのは存在しています。そうではあるのですが、そうした例外を除け ば、男女共学は全米で当たり前になっています。アイビー・リーグなどの伝 統校の場合は、入試の段階で合格者の男女比率を50:50にするような操 作も行われているようです(認めていませんが)が、これに対する異議とい うのはありません。  そもそも、訴訟社会であるアメリカでは無理だということがあります。仮 に勉強熱心な高校や大学があり、優良なカリキュラムと、優れた教授陣を用 意していて、その上で女性に門戸を閉ざしているようなら、訴訟で負けて徹 底的なダメージを受けるに違いありません。ですから、「エリート男子校」 というのは、基本的にはありません。  一方で、日本には中学や高校を中心に男女別学の伝統があるわけです。大 学の場合は、特に女子短大というカテゴリが人気がなくなった結果、四年生 大学への転換や共学化が進んでいます。また、この「女子短大へエスカレー ターで」というシステムが崩壊した学校の場合は、共学化して、同時に海外 留学を支援する国際教育を前面に打ち出して、大成功している学校がありま す。  今でこそ、渋渋(しぶしぶ)とか、渋幕(しぶまく)というニックネーム で、中高における国際教育の最高峰と言われている渋谷学園も、また猛烈な 勢いでこの2校を追っている広尾学園も、昔は地元の商家の娘さんなどが (失礼)行く、ヤンキースレスレの女子高(失礼)でした。ですが、この3 校の場合は共学化によって、正に改革の成功例になっているわけです。  その一方で、首都圏の場合に東大や医学部などに多くの合格者を出してい る「受験校」のほとんどは男子校か女子校です。全く古臭い話ですが、それ どころか、昨今の日本での議論を見ていると、男女別学ということを積極的 に評価する動きもあるようです。  例えば、女子校というのはどちらかと言えば「良妻賢母」を育てるという よりも、女性のエリートを育成しようというポリシーを掲げた学校が多くな っています。この点では、アメリカの女子高校(ガールズ・スクール)と同 じだと言えます。更に、具体的な理由としては、今でも共学だと理系の強い 女子は「女のくせに生意気だ」とか「嫁に行けない」という目で見られるの で、女子校の方が「理系女子」を育てるのにはベターだというような話があ るわけです。  例えば、共学校だと女子は部活のマネージャーなどに回りがちだが、女子 高なら主役になれるというような、それこそ50年前に言われていたような 話が、今でも言われていたりします。  一方で男子校については、現代では「エリートは男性に限る」というよう な保守的な考え方はさすがに過去のものとなっています。その代わりに、 「一般に男子は女子より精神的な成熟が遅い」ので、女子と比べて「萎縮し ないで伸び伸び育てる」には男子校が良い、などという「理由付け」がされ ているのです。毎年1月から2月の受験シーズンになると、塾チェーンの資 金に影響された「教育評論家」が、首都圏の一貫校受験を煽るわけですが、 この「男子は成熟が遅いので、女子と隔離すべき」というトンデモ理論は、 結構親に受けているようです。  更に大昔から伝統的に存在するのが、高校生の男女交際は「受験勉強に弊 害があるので禁止」するという考え方です。男女が交際するとお互いにその ことばかり考えて勉強に集中できない、だから高校は別学にするというわけ です。本人たちはともかく、親とか祖父母の世代は真剣にそう考えるらしく、 一般的に受験校イコール別学ということになっているわけです。  しかしながら、こうした考え方は国際的に見れば非常に問題が多いように 思われます。(続く)

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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