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弱小病院が研修医2桁フルマッチを目指す その3

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室153.2022.8.14. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 弱小病院が研修医2桁フルマッチを目指す その3 前回からの続き→ 松阪市民病院院長としてはどうでしょうか。例えば、県内に於いては紀南紀北地区、伊賀地区、名張地区のように、基幹病院が1つ無くなればその地域の医療が立ち行かなくなる地域もあります。そしてそのような地域では、各診療科の医師不足に対して三重大学は医師派遣を考えてくれるかもしれません。しかし松阪地区は我々の病院以外にも、松阪中央総合病院や済生会松阪総合病院があり、我々の病院が崩壊したとしても他の2つの病院が存続する限り、地域の医療は困らないと言う理屈になります。また、他の2つの病院の方が規模も大きく、赴任を希望する医師も多いです。したがって大学から医師を派遣するにあたって、実は先ほど挙げたような地域の中核病院よりも派遣へのハードルが高いわけです。 三重大学に派遣可能な医師が溢れていれば、すぐにでも解決する問題ですが、残念ながらそういうわけではありません。おそらく伊勢赤十字病院や市立四日市病院、桑名市民病院、松阪市では松阪中央病院や済生会松阪総合病院など、規模が大きい病院や北勢地区の病院、新しい病院は何もしなくても赴任を希望する医師は多いと思いますが、残念ながら我々の病院に進んで赴任を希望する医師は非常に少なく、しかも三重大学から派遣のハードルが最も高いと言うのが現実です。 そんな中で松阪市民病院としてどうすればいいのか考えました。まず最優先事項は、今いる医師に離職してもらっては困ると言うことです。1人1人すべての要望を叶えることは難しいし、私にも譲れない1線はありますが、前向きに診療に取り組もうとしている各診療科の医師に対しては、できるだけの支援はしていきたいと思います。そして可能な限り、常勤医師の負担は取り除いていきたいとも思っています。 次に、三重大学各診療科の先生方と密接な関係を構築し、できるだけ当院に支援いただけるよう、公立病院として可能な範囲でお願いしていくしかないと思っています。 そして最重要事項は優秀な研修医を獲得し、松阪市民病院に残ってもらって10年かけて医師を育てることです。その間、少し辛いかもしれませんが我慢して、現在いる我々が松阪市民病院を支えていかなければいけないと思っています。 残念ながら、今までも研修医獲得に努力してきたと言いながら、松阪市民病院は全く努力をしてきませんでした。努力の方法はいくらでもあったのに、病院独自の奨学金を出すぐらいしか考えてこなかったのが、今のこの結果です。2年前には、1次募集のマッチングは全くない状況でした。 三重県にはMMC制度があり、それはそれで理論上は非常に良い制度なのですが、それのみに頼ってしまうと病院間の序列が決定してしまい、強い病院はますます強く、弱い病院はますます弱くなってしまうような気がします。三重大学の優秀な研修医は、三重大学や市立四日市病院、伊勢赤十字病院を希望してしまうのです。 そこで、本年から大阪のレジナビに参加するようにしました。以前、名古屋のレジナビに参加したこともあったのですが、名古屋のレジナビから研修医は全く見学に来ませんでした。おそらく、名古屋の場合は名大が圧倒的に強くてMMCに似た独自の研修医制度があり、最初から三重県に関係がある研修医しか、三重県に来ないわけです。しかし大阪のレジナビは違いました。4月に行われた大阪のマイナビや7月のレジナビに参加して以降、大学4年生、5年生ではありますが、関西方面の医学生見学者がかなり増えました。このことは、本年度のマッチングとは直接関係は無いと思いますが、来年度以降の研修医募集において大きな力を発揮することになると思います。大学6年はほとんど来なかったのですが、その理由としては早いうちに志望研修先病院が決まってしまうのではないかと思いました。来年からは大阪に加えて東京のレジナビ、マイナビにも参加しようと考えています。 それと同時に、どういう理由かわかりませんが、本年から三重大学医学部学生の病院見学者がかなり増えてきました。全く以て理由はわかりません。しかし多くの学生は優秀で熱意も高く、将来松阪市民病院に入ってくれたら貴重な戦力になると思います。研修医獲得のために、研修医の募集並びに研修医教育担当部署を新たに病院内に設置し、事務職員を2名配置しました。 さて、当院を見学に来た医学生に、どうやって当院に研修に来てもらうようにするつもりなのか、その事は企業秘密なので言えません。ひと言、私の体を張っている事だけは述べておきます。また、それ以前に企業秘密が上手く機能し、私の考え通りに進み、かつてないほど松阪市民病院の研修医が増えるのか(毎年2ケタを目指す)そうでないのか、まだわかりません。 しかしこの文章を読んだ先生方は、来年度の松阪市民病院研修医が10人フルマッチしているかどうか、注目してほしいです。来年度10人フルマッチすれば、再来年は12人募集したいと考えています。(本年度は少し厳しいと思うが、ひょっとしたら・・・) 松阪市民病院に2桁の研修医を迎えた事は未だかつてありません。松阪市民病院の先行きもはっきりしない中、研修医募集のハードルはとても高いです。しかし院長としての目標は高く、2桁フルマッチを毎年目指し、松阪市民病院で研修医を育て、10年後には医師不足で困らない病院にしたいと思うと同時に、30年後には、その研修医達が日本の医療に貢献できる人材に育って欲しいと思っています。 最後に、私は三重県尾鷲市出身である。小さい頃、尾鷲の“江戸っ子”と言う寿司屋の前を通るたびに、ここの女将は坂本九のお姉さんだと聞かされたものでした(真偽の程は定かではありません。)。私は、坂本九さんの歌のタイトルのように常に上を向いて歩いて行きたいし、松阪市民病院の研修医にも上を向いて歩いていってほしいと思っています。 “上を向いて歩こう” ***************************** ドクター畑地の診察室153.2022.8.14号 毎週日曜日お昼に配信します。 次号は2022.8.21.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 *****************************

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