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vol.137:私域流量の獲得に成功しているワイン、果物、眼鏡の小売3社の事例。成功の鍵はそれ以前の基盤づくりにあり

知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
  • 2022/08/15
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 137 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、私域流量の成功事例についてご紹介します。 みなさんとお約束した通り、私域流量の成功事例をしていて、数としては集まってきましたが、なかなかうまく体系化をして整理をすることができず苦しんでいます。 その過程で気づいたのは、当たり前だと言われれば当たり前のことなのですが、成功する企業は、私域流量の手法よりも、それ以前のデジタル化や企業ミッションの再定義をきちんと行っているということです。この基盤がしっかりしているので、成功できるのです。 最近、「商品情報を拡散するにはTikTokとインスタグラムのどちらがいいですか?」という類の質問をされることが増えてきました。今まで、私なりに一生懸命答えてきましたが、中国の成功事例を学べば学ぶほど、この質問は愚問なのではないかと思えるようになりました。 なぜなら、デジタル基盤がしっかりと構築ができ、企業ミッションが定まっていれば、TikTokを使うか、インスタグラムを使うかというような瑣末な問題はほぼ自動的に決まるからです。 その基盤なくして、闇雲にTikTokで発信をして、再生回数とファン数だけを追いかけてみても、私域流量の獲得やその成果である業績に接続できないままに終わる可能性が高くなります。再生回数だけをKPIにしてやりすぎると、炎上商法が最も効率がいいということになりかねません。 そこで、今回は3社の成功事例をご紹介しますが、いずれも私域流量の獲得に乗り出す以前にしっかりと企業の体制づくりをしていることが成功の要因になっています。「TikTokかインスタグラムか?」という私域流量獲得の瑣末な手法ではなく、それ以前の基盤づくりをどうしてきたのかという点に注目をしてお読みください。 今回は、私域流量の獲得に成功した3社の事例をご紹介します。 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 137 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ 私域流量の獲得に成功しているワイン、果物、眼鏡の小売3社の事例。成功の鍵はそれ以前の基盤づくりにあり 小米物語その56 アリババ物語その56 今週の「中華IT最新事情」 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 私域流量の獲得に成功しているワイン、果物、眼鏡の小売3社の事例。 成功の鍵はそれ以前の基盤づくりにあり ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、私域流量の獲得に成功した3つの企業の事例をご紹介します。 私域流量(プライベートトラフィック)とは、簡単に言うと、自分の手で客流を獲得してビジネスを展開することです。対語になる公域流量(パブリックトラフィック)というのは、検索エンジンや大手ECなどからの送客のことです。 例えば、オンライン小売をしようと思ったら、日本では楽天やアマゾン、中国では淘宝網(タオバオ)などのECに出店をするのが一般的です。お客さんはECプラットフォームが集めてくれます。その集めてくれたお客さんを獲得してビジネスをするというのが公域流量に頼ったビジネスです。商店街やショッピングモールと同じ仕組みです。運営する商店会、モール運営者がさまざまなキャンペーンや宣伝を行ってお客を集めてくれます。 このような手法は一見合理的に見えますが、楽してお客さんをつかめるわけではありません。ECの中で競争があるからです。例えば、タオバオでは、同じ商品を売っているライバルの販売業者がたくさんいて、商品名で検索をした時に上位に表示されるのは、タオバオが主催するキャンペーンなどに積極的に参加をする販売業者です。それには費用がかかります。あるいは買ってもらうには価格をライバルよりも安くしなければなりません。これも利益を圧迫します。 ところが、中国ではすでにECの利用者拡大が頭打ちになり、これ以上の伸びが期待できなくなっています。2021年のアリババの財務報告書から、新規顧客獲得コスト=営業費用支出/新規増加顧客数で計算してみると477元(約9500円)になります。数年前は200元程度であり、新興ECとも言えるピンドードーでは現在でも100元以下です。新しいお客さんを獲得するのに大きなコストがかかるようになっています。 アリババのビジネスは、このようにして獲得した客流を各販売業者に分配することで、分配するときに利益が発生します。つまり、アリババは客を捕まえて、それを販売業者に送客するビジネスをしているわけで、新規顧客獲得コストが上がるということは原材料費や仕入れ価格が高騰することに等しく、販売業者が支払うキャンペーン参加費用や広告出稿料なども上げていかざるを得ません。 しかし、そうなると、販売業者の視点では、アリババの流量に頼るよりも自分たちでお客を集めた方がいいと考えるようになります。これが現在、中国で私域流量が注目される最大の理由になっています。 この辺りの事情は、過去、本メルマガでも複数回にわたってご紹介しています。併せてお読みいただくと理解がしやすくなるかと思います。

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