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佐々木俊尚の未来地図レポート 2022.8.22 Vol.718
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【今週のコンテンツ】
特集
日本と中国の関係を、現代の国際政治だけでなく歴史からも俯瞰する
〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(3)
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
日本と中国の関係を、現代の国際政治だけでなく歴史からも俯瞰する
〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(3)
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今年出したわたしの新著『読む力 最新スキル大全』を補足し、どのようにして世界観を構築していくのかを深掘りしていくシリーズの第3回です。
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モノゴトを、画一的なたったひとつの視点だけでなく、たくさんの視点から見ること。それによってモノゴトは立体的なイメージとして浮かび上がってくる。たくさんの情報を集めても、それらがバラバラに保存されているだけでは、「点の集合」でしかありません。そうではなく、まるで上空から鳥が街を見下ろすようにしてモノゴトの全体像が立体的に見えてくると、バラバラだった情報それぞれのつながりや関係が理解できるようになる。
それが世界観を「立体化」するということです。そして本メルマガの前回では、立体化にくわえて過去の経緯などを知ることによって、立体がさらに「四次元化」できるということも解説しました。具体的には、「老朽化する道路や橋などのインフラ」というモノゴトについて、1970年代の田中角栄の時代の「日本列島改造論」から2000年代の民主党政権「コンクリートから人へ」政策に至る時系列を知ることで、インフラの問題を四次元化してイメージするという実際を学びました。
四次元化について、もうひとつ例題を出しましょう。「日本と中国のこれからの関係がどうなるか」という外交・安全保障の話です。
中国と日本の関係についての記事は、大量に毎日流れています。尖閣諸島付近への中国漁船の侵入、同海域での中国海警の動き、南シナ海の基地、習近平国家主席の発言、ロシアとの関係、北朝鮮との関係、アメリカとの対立、そして中国はウクライナ侵攻から何を学ぼうとしているのか…枚挙にいとまがありません。
これら日本で報道される日中関係の記事はたいていの場合、「中国が超大国になって、日本など周辺国の脅威になってきている」という視点で書かれています。こういう論調です。
「中国は近い将来にアメリカの経済規模を抜いて世界一位になり、軍事でも超大国になっている。韓国やベトナム、フィリピン、オーストラリアなどの環太平洋の国々を恫喝して配下におさめようとしており、日本も例外ではない。これにわが国はどう対抗していけばいいのか」
これらの議論はそのとおりなのですが、たくさん読んでいると飽きてきます。「中国は脅威である」というひとつの視点だけで書かれているからです。だからこのような記事ばかり読んでいると、逆に近視眼的、狭隘な視点におちいってしまう危険もあるでしょう。
そこで大切なのは、視点を入れ替えてみることです。たとえば国際政治学者の山崎周氏がシノドスという学術系ウェブメディアに寄稿した以下の記事を読んでみましょう。
★中国は日本の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想」をどう見ているのか?―セキュリティ・ディレンマの観点から
https://synodos.jp/opinion/international/23722/
この記事によると、日本では「自由で開かれたインド太平洋構想」を中国の侵略から身を守るための自由主義諸国の連合というように捉えているけれども、逆に中国から見るとこの構想が日本による中国の封じ込めであり、中国にとっては大きな脅威と映っていることを指摘しています。
こういう記事を読むと、急に視界がぱあっと開けた感動があります。物体をある一方向からしか見ていなかった。しかし別の方向から見直してみると、まったく違う形をしていることに気づく。そんな感じです。日本からの画一的な視点だけでは、日中関係の全体は見えません。逆に中国から見るとどう見えるのか。さらにロシアからは、北朝鮮からは――こういう視点の入れ替えをしてみると、急にものごとが立体感を帯びて浮かび上がってくるように感じることがあります。
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