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【Vol.444】冷泉彰彦のプリンストン通信『アメリカ政局と共和党の党内抗争』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「日本の警察、どうして微罪摘発を強化するのか?」  さて、微罪摘発ということで、最近話題になっているのが「自動車への職 務質問」です。昔は自動車を止めて検査する場合は、検問と言う言い方が多 く、酒気帯びの取り締まりとか、逃走被疑者への網を張るための検問などが 多かったのですが、最近はランダムに「怪しい車を停めて」携行品を検査す るというようなことが目立っています。  そこで問題になるのが、まず刃物の関係です。日本の銃刀法、軽犯罪法で は、例えばキャンプをする、あるいはその帰りなので、調理用の刃物を持っ ているとか、薪割り用のナタを持っているなどという、「目的がハッキリ」 していれば良いのですが、目的外の携行というのは罪に問われることがあり ます。  例えば、日曜日に河原でBBQをして、そのまま調理器具をSUVに載せ たまま、ウッカリ月曜日に出勤しようとして、職質で捕まるということがあ るのです。その場合に、本人に特に怪しいところがなければ注意で済むにし ても、30分ぐらいはロスして嫌な思いをすることになります。  仮に、そんなことで摘発するのはおかしいなどと反発してしまうと、これ は怪しいし危険だということで、他のパトカーが呼ばれる、そうすると事件 が「大ごと」になって、警察まで来て下さい、などということになる可能性 もあります。さすがに、そこで殺されることはないので、日本の方が遥かに マシですが、黒人青年を信号無視で停めて、反抗的だと「勝手に身の危険を 感じて青年を殺してしまう」アメリカの警察と、同じような構図があるとも いえるでしょう。  ですが、刃物はやはり刃物であり、管理者として注意義務があるのは事実 です。BBQが終わっても包丁をウッカリ車内に放置したというのは、ある 意味いい加減であり、仮に無くなって犯罪に使われても気づかないという無 責任さを批判されたら、それは謙虚に受け止めるべきでしょう。  問題は、もっと別の品物の場合です。軽犯罪法では、「目的なく携行して はいけない」モノとして、刃物の他に、ロープやハシゴなども記されていま す。つまり、空き巣に入る際の道具というわけで、とにかく泥棒を摘発する ためにそうした品目が決まっているわけです。ところが、その「禁止リス ト」の中に懐中電灯が入っているのです。  キャンプをするとか、日帰りで洞窟探検に行った、あるいは花火大会の帰 りが暗いので持って行ったなど、理由がハッキリしていればいいのですが、 そうしたストーリーがないままに、懐中電灯を携行していると、これは違法 行為になってしまいます。  このことは余り知られていないので、結構トラブルになることがあるよう です。ただ、懐中電灯については防災目的、特に豪雨時の避難、夜間のバッ テリー上がりという万が一への備えなど、危機管理意識が高い人に限って携 行している場合があり、これは問題だと思います。それ以前の話として、今 のスマホはタッチ操作で、LEDをマックスの明るさで照射して懐中電灯に する機能がついています。  ですから、空き巣犯罪を抑止するのに、懐中電灯を摘発しても無意味と思 います。もしかして、そんなことを言うと、警察庁は日本で発売するスマホ だけ懐中電灯機能を外すように要求するかもしれません。それでは、あるで 日本は盗撮と空き巣がウヨウヨしていて、日本仕様のスマホは、日本人イコ ール犯罪予備軍だという前提で特別に規制された品ということになってしま います。それこそ国辱ものと思います。  国辱といえば、近年、特に首都圏で「外国人の、特に肌の色の黒い人間」 に関しては、自動的に職質の対象となるというケースが目立っているようで す。これも同じで、「麻薬事犯」と「不法滞在」を摘発するとポイントにな るからやっているのだと思いますが、在日のアメリカ大使館からかなり強い 抗議がありました。また大使館からは、在日のアメリカ人に対して憤慨を込 めた注意喚起があったり、かなり国として恥ずかしい形になっています。こ れも微罪摘発の延長の問題と言えます。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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