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佐々木俊尚の未来地図レポート 2022.9.29 Vol.719
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【今週のコンテンツ】
特集
素晴らしい本に出会うと、ただ一冊の本だけで四次元のイメージが湧くことがある
〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(4)
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
素晴らしい本に出会うと、ただ一冊の本だけで四次元のイメージが湧くことがある
〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(4)
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今年出したわたしの新著『読む力 最新スキル大全』を補足し、どのようにして世界観を構築していくのかを深掘りしていくシリーズの第4回です。
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さまざまなテーマについて、たったひとつの視点からだけでなく、たくさんの視点から見ること。それによってそのテーマは立体的なイメージとして浮かび上がってきます。加えて、過去の経緯など時系列の視点も得ることによって、そのテーマが立体だけでなくさらに「四次元化」してイメージできるということを解説してきました。
「世界を四次元化する」ということ。これを前回は「日本と中国の関係を学ぶ」というテーマで解説しました。現在の視点だけでなく、歴史的に中国と日本はどういう関係にあったのか、また中国から見て日本という国はどういう存在だったのか。それを儒教という伝統的な社会思想の視点から見てみるということをやってみたのです。
さて今回は、さらに深掘りします。「四次元化」について、立体的・時系列の視点をさまざまなニュースや記事などで多面的に得るだけでなく、実は素晴らしい書籍からであれば、ただ一冊の本を読むだけでも三次元・四次元の視線を得られることがあるのだということを、解説していきたいと思います。
最初に取りあげるのは、米スタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授が書いた『CODE インターネットの合法・違法・プライバシー』(翔泳社、2001年)です。これはインターネット関連の本としてはかなり古いのですが、読んてぐっと惹き込まれる圧倒的な感じはまったく色褪せていません。
『CODE』が描いているのは、従来の道徳や法律などの規制に対して、インターネットの世界ではアーキテクチャによる支配ということが知らず知らずのうちに行われているということです。アーキテクチャは「建築」「構造物」というような意味ですが、情報通信の分野では、ソフトウェアやシステムなどによってかたちづくられる構造のことを指しています。
アーキテクチャは目に見えるものではないので、この支配は気づかれにくい。ネット社会と民主主義が折り合うためには、アーキテクチャ支配を可視化させることが必要だとレッシグは説いています。
このアーキテクチャ支配の題材として、タバコの規制の話をレッシグは出していうのです。これが非常にわかりやすい。
健康に害のあるタバコをどうすれば人びとにやめさせることができるか。それには「法」「市場」「社会の規範」「アーキテクチャ」という四つの制約が可能だといいます。
「法」による制約とは、「未成年が吸ってはいけない」「指定された公共の場所では吸ってはならない」と立法すること。レッシグによれば、アメリカ人は法の制約はあまり好まず、「他人の車に乗っているときはタバコは吸うべきではない」「食事中はタバコを吸ってはならない」といった「社会の規範」による制約を受けることの方が多いそうです。
またタバコには、値段という「市場」の制約もあります。値段が上がれば吸えなくなる人が出てくるし、逆に種類を増やすなどして選択肢を増やせば、制約は減る。
最後に「アーキテクチャ」、すなわちテクノロジーの枠組みによる制約があります。ニコチンの多いタバコは中毒性が強いから制約が大きくなる。においのきついタバコは吸える場所が限られているから制約が大きい。逆に無煙タバコは吸える場所が多いので、制約が減ることになる。
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