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第266号:どうしたら木材から水分を抜けるのか(上)

田中優の‘持続する志’(有料・活動支援版)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『 田中優の未来レポート 』 第266号/2022.8.30 http://www.mag2.com/m/0001363131.html ※ 有料メルマガにつき、全文の転送転載はご遠慮ください 一部転載は大歓迎です ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ どうしたら木材から水分を抜けるのか(上) オーストリア・ギュッシングの木質バイオマスが破綻していた。この事例は林業やバイオマスに知識のある人しか興味を持たない話だろうと思う。しかし日本の中でも地域活性化の話の中では、地方にある数少ない資源である木材の大事な話なので知っておいてほしいと思う。言うまでもなく日本は森の国で、飛行機に乗るとつくづく思うが見渡す限りの森林が広がっている。この森を利用することで、地域が経済的に発展して活性化するという話だったから、誰もがギュッシングの事例に心躍ったのだ。ところがそうして盛り上がった話は、破綻という最悪の形で報じられたのだが、破綻の方の話はほとんど知られないままだ。それを美談として広げた人たちが、引っ込みがつかなくて知らせずにいたせいかもしれない。 何が真の原因なのかも問わずに、そのまま知らせずにいることは誠実とは言えない。未だにその成功を信じていて真似しようとする人もいるかもしれない。何が失敗の原因であったのかを知ることはとても大切だと思うのだ。 ぼくとしてはすでに、天然住宅コラムの中で「バイオマスが失敗するのは「乾燥度」を無視する結果」と書いている通り、この乾燥度を軽視したことが問題の根本原因となっていると思う。下図にその点を赤線した図を表示する(図1)。 https://tanakayu.com/tennen-218/ しかし困ったことに、今の木材乾燥技術といえば「機械乾燥」の話とされて、普通に120℃の高温乾燥が前提にされてしまう。いや、それではせっかく木材が持っている防カビや防虫、人体への健康効果といったメリットが失われてしまう。木材はとても大きく言えば、鉄筋コンクリートの構造によく似ている。木材繊維の「セルロース」が鉄筋で、コンクリートに当たる部分が「リグニン」だ。この二つの素材によって、「鉄筋コンクリート」の強い構造が作り出されているのだ(もっと細い針金の役割を果たしている部分を「ヘミセルロース」という)。(図2) 図2  セルロースとリグニン そのコンクリートに当たる「リグニン」の中に、防虫や防カビの成分が含まれている。そのリグニンは成長が終わって残滓となる木質部分に、水の通っていた部分を塞ぐように詰まっていく。それによって繊維(セルロース)の束だった木材が、鉄筋コンクリートのような構造になって残っていくのだ。 この木材の構造が、国内に数多くある世界最古の木造建築物を持たせているのだ。しかしこの「リグニン」の成分は80℃を超えると変質してしまう。だから機械乾燥では木材の色が変化するとともに性質を失ってしまう。「リグニン」は木材の精油分の固まったもので、これが木材を長く使える材質として成長が終わった部分の空間を満たしながら、物理的にも他の生物に対しても守りの砦となっている。

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  • 環境活動家、田中優(たなかゆう)の有料・活動支援版メルマガです。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などのさまざまなNGO活動に関わり、日本で初めてのNPOバンクを作りました。経験と知識と綿密なデータを基に、独自の視点で生み出した社会の新しい仕組みづくりのヒントや国内外を取材したお話をご紹介します。頂いた購読料の一部を、次の社会を作るための活動資金にさせて頂きます。 ★まぐまぐ大賞2017 専門情報部門にて【第1位】 ★まぐまぐ大賞2018 専門情報部門にて【第2位】 ★まぐまぐ大賞2019 専門情報部門にて【第3位】 を頂きました!
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