アンケートを再考する

ドクター畑地の診察室156.2022.9.4. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います！おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者（肺癌、喘息、COPD、肺炎など）を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説＆ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信！ https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身　自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け！radioを聴いてらんらんらん（lung lung lung）」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ アンケートを再考する 今から25年ほど前、紀和町立紀和診療所（今は合併して三重県熊野市）の所長をしていた頃の話です。色々町役場と交渉したいことがあり、診療所内で診療所満足度調査を行いました。結果は驚くべき数字で、99%の診療所に訪れる患者さんが“診療所のサービスに満足している”という結果でした。この数字をもって町役場と交渉したのですが、よく考えてみるとこの数字には全く意味がありません。私の中では、このような結果になることは最初からわかっており、確信犯でした。そもそもの話、診療所に満足していない患者さんは、診療所を受診しないからです。田舎であり選択はかなり限られますが、満足していない患者さんは他の医療機関を受診するはずです。 先日、ある医療機関で検査の満足度調査を行っているのを目にしました。満足度調査の方法は、1人1人にアンケート用紙が配られて横には職員が配置されていました。そのような中で満足度調査が行われたら、普通は満足している欄に○をつけざるを得ないわけです。このようなアンケート調査をして、どのような意味を見出そうとしているのか、私には甚だ疑問です。 アンケート調査はそもそも、誰かわからないような顔が見えない状況で、特定の集団に偏ることなく、幅広い層に調査をおこなって初めて意味を成すような気がします。例えば診療所の満足度調査であれば、本来ならば診療所に訪れる患者さんではなく、町民全体に無記名の形で満足度調査を行うべきでした。また検査の満足度調査を行うのならば、検査終了後アンケートを渡し、職員が横に配置されるのではなく、無記名で投票する箱を設け、別室で記載をするよう配慮すべきでした。 私は時々、医師を対象としたWEB講演会をすることがありますが、終了時に必ず講演会の満足度やコメントを記載するアンケート調査が行われます。誰が回答したかわからない状況となるので、このようなアンケートは正確にその満足度を把握できることになると思いますが、そもそも興味がない人は私の講演会など聞かないわけで、真の評価になるのかどうなのか微妙なところではあります。したがって本当の意味での評価は、聴取者数と満足度両者を評価しなければいけないことになると思います。 何か物事を決めるときに行われる市民公聴会なども、本当に市民の声を代表している人が参加しているのかどうなのか、なかなか難しいところであると思います。多くの市民はそのような面倒なことはしたくないからです。 いろいろ考えていくと、どのようにアンケートを取ることが本当に実情を反映しているのか、どのように意見を抽出することが、公平に意見を抽出することにつながるのか、なかなか難しいと考えてしまう今日この頃です。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ドクター畑地の診察室156.2022.9.4号 毎週日曜日お昼に配信します。 次号は2022.9.11.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身　自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け！radioを聴いてらんらんらん（lung lung lung）」という毎週月曜日放送の番組を担当 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください。 ◆2022年08月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2022/08 2022/08/28 オミクロン株のPandemic 2022/08/21 104年振りの偉業達成！ 2022/08/14 弱小病院が研修医2桁フルマッチを目指す その3 2022/08/07 弱小病院が研修医二桁フルマッチを目指す その2. ◆2022年07月