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vol.140:始まった中国義務教育の情報教育。どのような授業が行われることになるのか

知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
  • 2022/09/05
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 140 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、中国の情報教育についてご紹介します。 中国の教育部が新しい「義務教育情報科技課程標準」を公開しました。これは日本の指導要領にあたるもので、小学校1年生から中学3年生までの9年間で、何を学ぶべきかを定めたものです。 この中で、小学校1年生から情報教育(情報科技課程)を学ぶことが定められました。 日本の情報教育の大きな特徴は、思考能力に重点を置いていることです。プログラミング思考が重要視されますが、それは決してプログラムを書く能力を養うことではなく、いわゆる論理思考に近いものです。他の教科を学ぶときに、デジタルデバイスを使いこなし、論理的な思考をすることで、教科の習得に役立て、社会に出てからも仕事に役立てる基礎スキルをつけようというねらいです。 一方、中国の場合は、デジタルデバイスを体験すること、使いこなすことに比重が置かれています。思考能力というよりも、使いこなしスキルに比重が置かれ、実習としてスマホ決済を使ってみる、フードデリバリーを注文してみるという授業案もあるほどです。 もちろん、どちらが優れているかは一概には言えません。日本の方が思考能力という基礎能力に真正面から取り組んでいて、中国の場合は、社会を生き抜く力をつけることに取り組んでいるように思います。 面白いのは、情報科技課程は、労働課程とともに、総合実践活動課程というカテゴリーに分類されていることです。労働課程とは、さまざまな職業の仕事内容を学ぶというものです。つまり、情報科技課程も労働課程と同じように、社会に出てから役立つ力をつけることが目的になっています。 そのため、特に低学年では、デジタルサービスを使ってみるという体験が重視されています。 課程標準には、各学年での学習の目標と、授業案が記載されています。今回は、この授業案をご紹介し、中国の情報教育がどのようなものであるのかをご紹介します。 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 140 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ 始まった中国義務教育の情報教育。どのような授業が行われることになるのか 小米物語その59 アリババ物語その59 今週の「中華IT最新事情」 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 始まった中国義務教育の情報教育。 どのような授業が行われることになるのか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、中国の情報教育についてご紹介します。 日本でも小学校、中学校でプログラミング学習が必修科されました。このプログラミング学習は、C言語やJavaといったプログラミング言語の学習だと誤解している人もいますが、文部科学省が目指しているのは「プログラミング的思考を養う」ことです。そのため、タブレットなどの基本操作は教えますが、基本的には数学や国語、理科、社会などの各教科の中で、デジタルツールを活用した学習をすることになります。例えば、社会科では地域の事情を取材してビデオ撮影し、それをムービーにまとめたり、スライドにして発表をしたりということをします。決して、コーディングを教えるわけではありません。 中国では、2022年版の「義務教育情報科技課程標準」が公開され、小学校1年生から情報科技の授業が行われることが決まりました。今年の9月から施行されます。 これまで、中国が情報科技を教えてこなかったわけではありません。すでに2010年代には先進モデル地区を指定して、情報科技の授業を取り入れ、学校単位、地区単位で試みられてきました。また、2017年頃からは、多くの省市の独自標準で、小中学校での情報教育が行われてきました。今回、国の標準に組み入れられたことで、すべての小中学校で情報教育が行われることになります。 この先進地区で先行をさせていたということがポイントです。すでに授業案も蓄積をしていますし、教育人材も育ってきています。やりたい人に先にやらして、いろいろ問題が起きることもあるけど、それで環境が整ったところで国家標準にするという、いつもの中央政府のやり方です。 今回は、この課程標準に掲載されている事例や、先行していた授業例から、どのような教育が行われているのかをご紹介したいと思います。 まず、その前に、情報科技の期末試験の問題例を2つご紹介したいと思います。対象は小学校高学年から中学生です。いっしょに解いてみてください。

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