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小米物語その59
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2004年2月、アマゾンは副社長をリーダーとするチームを中国に派遣し、中国のECの買収に動いた。アマゾンの中国進出の足がかりとするためだ。当初は中国のECに投資をし、中国市場を学んだ後、買収したECを「アマゾン中国」に衣替えをし本格参入するという作戦だった。
アマゾンは、捜狐商城や当当網と交渉をしたが、条件が折り合わず、卓越網(ジュオユエ、Joyo.com)に話を持ちかけてきた。
アマゾンが卓越網に出資する場合、3つのパターンがあり得ると雷軍(レイ・ジュン)は考えた。ひとつは、アマゾンが卓越網に出資をし株主となるが、議決権はあくまでも金山軟件(キングソフト)が握る。しかし、これはアマゾンが承知をしないだろうと考えた。なぜなら、アマゾンは出資をして配当益を得たいのではなく、中国ですでにサービスを提供しているECを自分のものにして、それをアマゾンに衣替えすることで、中国市場に進出することがねらいだからだ。
2つ目のパターンがアマゾンが大規模な投資をし議決権を握り、キングソフトも株主として残る。これはアマゾンは承諾するかもしれないが、キングソフトにとってあまり意味のある選択肢とは思えなかった。なぜなら、アマゾンとキングソフトではその資本力に大きな違いがあり、アマゾンは増資をすればキングソフトの持株割合を希釈することができる。つまり、アマゾンはいつでも好きな時に、キングソフトを追い出すことができるのだ。
だったら、3つ目のパターン、アマゾンが卓越網を完全買収するという方がいいのではないか。アマゾンはそれを望んでいるのだし、未練たらしく株主に居座るより、完全売却してしまって、その代わり、買収価格を交渉した方が、キングソフトの利益をより大きくできるのではないか。
4月になって、アマゾンと卓越網の本格的な交渉が始まった。アマゾンの意向は雷軍の読み通りだった。そして、アマゾンと数社のベンチャーキャピタルに卓越網の株式を譲渡する基本合意がなされた。
しかし、5月になって、卓越網の取締役会は大荒れとなった。キングソフトとレノボは卓越網売却の立場だったが、卓越網に投資をしているベンチャーキャピタルと個人投資家たちが反対をした。彼らはアマゾンが卓越網を運営すれば、すぐに業績があがって株価が大きくあがると見ていたのだ。そのため、株式を保持し続け、アマゾンが卓越網の株価を大きく上げてくれたところで売却をして、より大きな利益を得たいと考えていた。完全売却をしてしまったら、その利益を得ることができなくなる。議決権はともかく、株式を残した部分売却にすべきだと言い出した。
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アリババ物語その59
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