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名著『自省録』『夜と霧』からストア哲学を学んでみる 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.720

佐々木俊尚の未来地図レポート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 佐々木俊尚の未来地図レポート     2022.9.5 Vol.720 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.pressa.jp/ 【今週のコンテンツ】 特集 名著『自省録』『夜と霧』からストア哲学を学んでみる 〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(5) 未来地図キュレーション 佐々木俊尚からひとこと ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特集 名著『自省録』『夜と霧』からストア哲学を学んでみる 〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(5) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今年出したわたしの新著『読む力 最新スキル大全』を補足し、どのようにして世界観を構築していくのかを深掘りしていくシリーズの第5回です。 ★『脳が超スピード化し、しかもクリエイティブに動き出す!現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』 https://amzn.to/3f2ZLBq さまざまなテーマについて、多くの視点から見ることによってそのテーマは立体的になり、「三次元化」されます。さらに過去の経緯など時系列の視点も加えることによってイメージは「四次元化」される。この四次元化こそが、世界を深く理解し知肉にしていくための最も重要なスキルです。 「四次元化」のためにさまざまな情報を読むということ。また過去を理解するために新聞記事データベースなどで古い時代の経緯を知るということをここまで学んできました。さらに素晴らしい書籍であれば、ただ一冊でも「四次元化」のイメージを持てるということを前回は解説しました。 前回取りあげた書籍は、ローレンス・レッシグの『CODE インターネットの合法・違法・プライバシー』(翔泳社、2001年)とデイヴィッド・グレーバーの『負債論 貨幣と暴力の5000年』(以文社、2016年)の2冊です。 今回は、書籍をもう一冊紹介しましょう。マルクス・アウレリウス・アントニヌスの『自省録』(岩波文庫、神谷美恵子訳、1956年)です。 ★マルクス・アウレーリウス『自省録』Kindle版 https://amzn.to/3APqnQM 著者は古代ローマの賢帝として有名だった歴史上の人物です。皇帝として多忙な日々のあいまをぬって、書き留めておいたメモを集めた内容です。だから掲載されている文章は断片的なものが多く、ひとつの物語というよりも「名言集」のような感じで読めます。たとえばこんな文章を紹介してみましょう。 「父からは、温和であることと、熟慮の結果いったん決断したことはゆるぎなく守り通すこと。いわゆる名誉に関して空しい虚栄心をいだかぬこと。労働を愛する心と根気強さ。公益のために忠言を呈する人びとに耳をかすこと」 「あけがたから自分にこういいきかせておくがよい。うるさがたや、恩知らずや、横柄な奴や、裏切者や、やきもち屋や、人づきの悪い者に私は出くわすことだろう。この連中にこういう欠点があるのは、すべて彼らが善とはなんであり、悪とはなんであるかを知らないところから来るのだ」 いまの時代にもじゅうぶん通じる心に響く文章です。『自省録』にはこういう短い文章がたくさんあり、「寝る前にちょっとずつ読むのを日課にしている」という話をよく聞くのもうなずけます。しかし本メルマガでは『自省録』を単なる名言集としてだけでなく、この本のコンテキストをさぐって四次元的な立体イメージを描けるかどうかにとりくんでみたいと思います。 まずグーグルで情報を検索してみましょう。ウィキペディアにはマルクス・アウレリウスも『自省録』もどちらも掲載されていますが、専門の研究者が執筆しているのか、なかなか難解です。たとえば「自省録」はこんな文章。 「後期ストア派の特徴とされる自然学と論理学よりも倫理学を重視する態度や他学派の信条をある程度受け入れる折衷的態度が見られる。例えば、たびたび表れる『死に対して精神を平静に保つべき』といった主題においては、ほぼ常にエピクロス派原子論の『死後の魂の離散』が死を恐れる必要のない理由として検討されている」

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