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週刊金融日記 第538号 モテ過ぎると子孫が残らない、AIが美術コンクールで優勝した話と獺祭、飛田新地

藤沢数希メールマガジン「週刊金融日記」
// 週刊金融日記 // 2022年9月6日 第538号 // モテ過ぎると子孫が残らない進化論パラドックス // 円安加速で1ドル=140円超え // AIが美術コンクールで優勝した話と日本酒の獺祭(だっさい)の話 // 飛田新地レポート // 他  こんにちは。藤沢数希です。  このメルマガ原稿を書いている時、ボリス・ジョンソン英首相の後任が、リズ・トラス外相(47)に決まりました。 ●英国、リズ・トラス新首相誕生へ 与党党首選で勝利 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0306F0T00C22A9000000/ ★外務大臣として対ロシア制裁で積極的に発言しており、なかなか勇ましい女性リーダーです。 https://twitter.com/kazu_fujisawa/status/1566756060417110017  イギリスの次期首相となる党首を決めるためにこれまで候補者同士がいろいろ討論していたのですが、核ミサイルに関するトラス氏のやり取りが大変に面白かったので紹介したいと思います。 ●Liz Truss asked about nuclear weapons: 'I'm ready to do it' https://www.youtube.com/watch?v=CM8evVhzHPI ●Emotionless Liz Truss says she would unleash nuclear annihilation if necessary https://www.mirror.co.uk/news/politics/emotionless-liz-truss-says-would-27816744  トラス氏はお父さんが数学の教授で、自身もオックスフォード大学を卒業しており、司会の方はBBCで政治ニュースのエディターをしていたジャーナリストの方なので、これがすごく面白く、英語的にも大変に勉強になりました。  司会の方が、次のように聞くのですが、この英語がすごいのです。 "One of the first things that will happen when and if you become Prime Minister, you'll be ushered into a room, a very private room at Number 10, and there will be laid out in front of you what are called the letters of last resort your orders to our Trident boat captain on whether you, Prime Minister Liz Truss, is giving your order to unleash nuclear weapons.  It would mean global annihilation.  I won't ask you if you would press the button, you'll say yes, but faced with that task I would feel physically sick.  How does that thought make you feel?"  まずは難しい単語から解説しましょう。usherが(劇場や教会などに)先導する。リズさんが首相になったら、Number 10のすごくプライベートな部屋に連れて来られるだろう、と言っています。Number 10というのは、10 Downing Streetのことで、ここに英首相のオフィスがあるわけです。Lay outが(書類などを)広げる、という意味です。つまり、あなたがもし首相になったら、あるいはなった時、いくつかある最初にすることのひとつは、首相のオフィスにやってきて、なんか大事な書類があなたの前に置かれていて……、みたいな感じですね、ここまでは。 ●10 Downing Street https://en.wikipedia.org/wiki/10_Downing_Street  それで、どんな書類なのかというと、それが、"what are called the letters of last resort your orders to our Trident boat captain"なわけです。ここも教養が必要な部分です。まず、Tridentです。Tridentというのは、大都市を一撃で消滅させることができる核ミサイルのことです。これが搭載された原子力潜水艦があって、そこの艦長への命令書として"the letters of last resort"というのが出てきます。  Letters of last resortというのが何かというと、イギリスが核攻撃されて、首相と副首相が死亡した場合の命令をここに書くのです。これは直ちに核で報復するとか、アメリカ政府の命令系統に入るとか、首相がいろいろ選べるらしいです。そして、この命令書を、Tridentが搭載された複数の原子力潜水艦に保存しておくことが、イギリスの首相の最初の仕事というわけです。核保有国であることのずっしりとした重みが伝わってきますね。  それでいろいろたくさん説明が間に入りましたが、結局、"One of the first things (間にたくさん説明) is giving your order to unleash nuclear weapons. "となり、最初にやることは、核ミサイルをunleash(解き放つ)命令をすることだ、となります。 ●Trident (UK nuclear programme) https://en.wikipedia.org/wiki/Trident_(UK_nuclear_programme) ●Letters of last resort https://en.wikipedia.org/wiki/Letters_of_last_resort  そして、これがどういうことを意味するかというと、"global annihilation"です。人類滅亡が起こるわけです。そういう場面で、あなたは核ミサイルのボタンを押すことができるか、と問うわけですが、そこで、司会者はそんなことは聞かない、なぜならあなたはYesということを私は知っているから、と言います。しかし、そういうイギリスが核攻撃されるという究極な場面で、我々は核で報復しなければいけない、ということはもちろんみんなわかっているが、もし私だったら、とても気分が悪くなって、体がすくんでしまうだろう、と。  リズ、あなたが首相で(あなたが核で反撃してくれるのはわかっているが)核のボタンを押さないといけない時にどんな気持ちになる?と聞きます。それに対して、トラス氏は、こう答えるわけです。 "I think it's an important duty of the Prime Minister and I'm ready to do that."  それは、つまり核による徹底的な報復は、英首相の責務である、と。そして、それは私はやる準備ができている、と。ここで聴衆は歓声を挙げます。トラス氏こそが我々のリーダーに相応しい、と。  司会者は、また同じことを聞きます。そして、トラス氏は、力強く"I'm ready to do it."と再び答えるのでした。  いやはや、これが核保有国の国民がリーダーを選ぶということの意味なんでしょうね。  幻冬舎の文庫のKindleがセールになっていて、『ぼく愛』がとても安くなっています。まだKindle版を持っていない人は、この際に是非。巻末にAV監督の二村氏との対談記事を載せていますが、Cakesでのこの対談は、『ぼく愛』の発売に際して収録されたものです。 『ぼくは愛を証明しようと思う。』 https://amzn.to/3x0Av7Y  今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。 - 飛田新地についてレポートします - 男もSTを盲信するとヤリ捨てされる気がします - おっさんですが21歳ナンパ師の部下と一晩中ストナンしましたが全敗しました - 巻末に【Cakes対談記事 恋愛工学は日本を救う? 二村ヒトシ × 藤沢数希対談 Vol.3 恋愛工学は普通の野球児たちを甲子園に連れて行く】掲載  それでは今週もよろしくお願いします。 1.モテ過ぎると子孫が残らない進化論パラドックス  身内の子供の大学入試の問題を見ると、僕は物理のPhDだが、もうすっかり高校物理の問題など解けなくなっている。数学も文系の方は覚えているべきことが少なく、中学受験算数と同様にパズルなので時間をかけさえすればなんとかなるのだが、理系の方は、さまざまな積分の手計算の技巧とか覚えていないので、ほとんどすぐには解けない。いろいろググりながら1問何時間もかければ解けるけれども。受験の物理も高校生の時はすごくできたので、『物理のエッセンス』を1週間ぐらいかけてやれば、また、できるようになると思う。結局、何の準備もなく、いまでも難関大学入試レベルで合格点を取れるのは、英語と現代文しかない。さすがに英語だけは東大でも京大でも慶応経済でも楽勝である。特に商科大学である一橋の英語が、英語で商談できるビジネスマンぐらいを想定して問題を作っているからなのか、外資系企業で働いていた僕からすると一番簡単だ。  物理は自分が書いた論文を読めば、こんなことやったなぁ、みたいにさすがに思い出せるけど、細かいことはほとんど覚えていない。僕は物性物理のシミュレーションをしていたのだが、そこで面白いというか、一番の見せ場は、原子や分子同士はとてもシンプルな相互作用が働いているのだが、全体としては、まったく非直感的な挙動を示すことを計算モデルを使って説明することだ。有名なのは超電導とか、そういう相転移である。磁性体とか半導体とかのこういう特異な挙動を電子デバイスに応用して、現代の壮大なエレクトロニクス産業が築かれている。  こうした昔勉強した一つひとつのことはすっかり忘れていて、いまでもすぐに使えるのは英語と日本語だけになってしまったわけだが、こういう本質的なものの理解の仕方は、すっかり癖になっていて、そういう物理学的な視点で、一人ひとりの人間をいくつかのシンプルな性質で説明できる分子みたいなものと捉えて、人間社会全体を眺めている。一人ひとりの人間は性欲や名誉欲に駆られる分子に過ぎないわけだが、人間社会全体はとても複雑で思いもかけないこと挙動を示す。  さて、また面白い現象が見つかったようである。読者からの投稿を紹介しよう。 ============================= - レオナルド・ディカプリオ「25歳以上とは交際しない説」がまた実証されました 25歳以上とは交際しない説が囁かれるレオナルド・ディカプリオが、恋人のカミラが25歳になった途端に別れたらしいです。

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