1.はじめに
8月末は国家予算策定プロセスの重要なタイミングです。各省庁が、次年度に実施する予算の見積もりを財務省に提示する概算要求の内容が公表されるからです。
民間サイドで政策に関わる人の中には、8月末の概算要求が出てから、関係する施策を読み込んで次の経営戦略を考えている人もいるのではないでしょうか。予算を活用するのは、法令を正しく理解することと同じぐらい、民間サイドで政策に関わる人にとって大事なことです。
予算を作るスケジュールや主な関係者、そして予算に民間サイドからどう影響を与えるかは第6回:国の予算のプロセスとスケジュールを理解するで解説したとおりです。一番のポイントは予算に反映されるべき内容は、概算要求のずっと前からわかるということ。概算要求には骨太の方針や新しい資本主義のグランドデザインと実行計画(成長戦略)などが大きく影響しているということを説明しました。
つまり民間サイドは、予算を獲得したければ概算要求の前に動き出さなければいけないということになりますし、骨太の方針や成長戦略の中身を見れば、次年度の予算要求のイメージをつかむこともできるようになるということです。
今回は、骨太の方針や成長戦略の文言から、次年度予算要求の内容を推察する方法についてです。
2.予算の目的
予算の本質は、金銭的なインセンティブを付けることで人々の行動を変化させることです。
わかりやすい例として、マイナポイントの予算があります。
これはマイナンバーカードを取得した人に対して、一定額のポイントを付与する仕組みで、2020年には2500億円の予算(2020年度予算)がついていました。
このマイナポイントがもらえる期間は2020年9月~2021年3月まででしたが、この間にマイナンバーカードを取得した人の割合は19.4%から28.3%に増えました。10%増です。
前年同月の推移を見てみると、14.0%→16.0%の2%増です。
もちろんこの増加率の変化には、さまざまな要因があると思われるので、予算があったからこんなに申込者が増えた、と断言することはできません。
でも、客観的にみれば、マイナポイントの付与という予算が、「ポイントをもらえるなら面倒だけどマイナンバーカードを取得しよう」と人々の行動を変化させる効果はあった可能性が高いといえるのではないでしょうか。
こどもが、テストでいい点を取ったらゲームを買ってやる、といわれて勉強を頑張ることに似ているでしょうか。金銭的なインセンティブは、人の行動を強制することなく変えることができるのです。
マイナポイントの事例は個人の行動に影響を与えたものですが、企業の行動変容を促す予算もあります。
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