Crazy Culture Guide Vol.315 ヘンテコ映画レビュー『ブレット・トレイン』ほか

さて『ブレット・トレイン』について、ぼくが気になったのはその叙述形 式です。この作品では基本的にいろいろなことの真相、あるいは過去が 「実はこういうことだったんですよ」と次々と提示されていくわけですが、 これがうまくいっているところとそうでないところがある。うまくいって いるところでは膝を叩いて「ワッハッハ」と楽しく観られるんですが、そ うでないところ、特に後半、悪役がいろいろな「ことの真相」をセリフで 語るところはいまいちうまくいっていないように思いました。これはおそ らく、というかほぼ確実に原作が小説であることと密接に関係しています。 ぼくは伊坂幸太郎の原作小説は未読ですが、小説の場合、このような叙述 形式が非常にうまくはまることが多い。おそらく『ブレット・トレイン』 の原作もそうなんだと思います。さまざまな真相が続けざまに「後から」 明らかになるときのカタルシス効果もあるだろうし、また本作はカルマと 運命をテーマにした物語なので、その内容と叙述形式の相性も良かったの ではないかと思います。