■夫婦でFIRE
FIREムーブメントが、日本でも流行している。FIREとは、
「経済的自立・早期引退」という意味だ。仕事を早期に引退して、
資産を運用しながら、悠々自適に死ぬまで過ごす生き方だ。
いわゆる早期退職とは違う。早期退職は、定年の5年くらい早く退
職するものだが、FIREはそれよりずっと若くリタイアを目指す。
その分、必要資金が前倒しで必要だから準備の仕方も変わってくる。
FIREを達成するには「支出の最適化」「収入を増やす」「投資
を行う」という3つの柱が必要だ。ただし、基礎がしっかりしてい
ないと立派な柱も簡単に倒れる。
基礎になるのが「目的」だ。FIREを達成した人に共通している
のは、明確な目的を持っていることだ。そして、その目的にそった
行動を積み重ねていることだ。
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ふつうのサラリーマンが、平均的収入・支出・投資で、ゼロから
FIREをめざす場合、どんなに短くても5年程度の期間は必要だ。
通常は10~15年を見ておくのがいい。
準備に時間がかかるのは、絶対守らねばならないことがあるからだ。
1つ目は、リタイア後、資産を枯渇させないことだ。子どもに困窮
を味わわせるわけにはいかない。
2つ目は、リタイアして人生が豊かになることだ。リタイア後、イ
メージしていた生活と現実にギャップが生じがちだ。生活していけ
るだけの資産はあっても、少しも幸せを感じないこともあるのだ。
たとえば、リタイヤして社会や人との関係が変わり、つながりが希
薄になることで、不安や焦燥に駆られたり、家族関係がうまくいか
なかったりすることもある。
そうならないためには、事前準備をしっかりしてから、会社員生活
から引退に移行するべきだ。FIREによる影響は、家族だでなく、
親戚などへも及ぶ。様々な配慮が必要なのだ。
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日本ではFIREを「フルFIRE」と「サイドFIRE」に分け
て考える。フルFIREは仕事を完全に引退する。サイドFIRE
は辞めた後も収入を得ることを主目的とせずに働き続ける。
子持ち世帯がフルFIREすると、億単位の資産が必要になる。サ
イドFIREなら、数千万の資産額でも、支出を最適化して最低限
の収入を確保できれば実現できる。
いままでフルタイムで会社勤めをしていた人が完全に仕事を辞めて
しまうと、家族にとっても環境の変化が大きく負担になる。だから、
少しずつ環境を変えていくサイドFIREがおすすめだ。
最終的に、仕事以外にやりたいことができれば、フルFIREに移
行してもいい。仕事自体が人生を豊かにすると考えるなら継続すれ
ばいい。会社員時代に基礎を作っておけば容易に移行できるはずだ。
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FIREには「経済的自立」と「早期引退」の二つの意味がある。
ただし「経済的自立」と「早期引退」は分けて考えるべきだ。
最初に目が行きがちなのが理想の生活だ。これについては、いった
んお金を度外視して考えてみるべきだ。経済的自立ばかり追ってい
ると、本当にやりたいことが見えてこないからだ。
経済的自立のほうが、数値化できてプロセスも楽しい。だが、理想
の生活こそ、FIRE達成の「目的」だ。これが明確だから、どれ
くらいお金を貯める必要があり、何をすべきかが見えてくる。
この順番で進めないと、自分の「経済的自立」が何か定まらない。
地方移住して自給自足的な生活をしたいのか、世界中を飛び回って
旅をしたいのかで、必要なお金は大きく変わるはずだ。
経済的自立の定義は、人によって異なる。それが明確にできないと、
資産がいくらあってもお金の不安はなくならない。だから「早期引
退」を考える過程で「経済的自立」の定義を固めていくべきなのだ。
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