【那覇への憧れ】
島にきて数年が経つとすっかり自分の故郷のような感覚になっていた。
住めば都とはよく言ったもので、最初の頃は島流しされた気分でショックだったが、慣れてくるとまさにそこが都になったのだった。
わずか数十メートルのメインストリートだが、生活に必要な物は全てそこで揃えることができた。
その島は小さい上にましてや自衛隊なので逃げも隠れもすることはできない。
そのため、酒場のみならぬ喫茶店や理容室までツケが効くので、みつおは仲良くなった店でツケでランチを食べ、ツケで酒を飲み、ツケで髪を切る生活になっていた。
その方が現金を持ち歩かなくていいので便利である。
給料日にはその支払いをしながら、また飲み歩く生活が続いていた。
しかし、何年もそこで、毎週、毎月、毎年と同じかパターンがつづくと、マンネリしてきて刺激を求めるようになっていた。
そこで、月に一回は那覇に遊びに行きたいのだが、自衛隊は厳しくて、島を離れるといざというスクランブルの時に、収集できないので理由がないと簡単に那覇に行く事は出来なかった。
しかし、みつおはいいように転換して解釈していたので、
「そうか、理由があれば那覇に行けるんだ!」
と、あの手この手で理由を考えては、那覇に出ていたのだった。
ある時は、あまり興味はないのだが
「無線ハムの資格を取りに行ってきます」
と、那覇に試験に行く名目で那覇の夜を楽しんでいたのである。
「遊びに行くんじゃないぞ、ちゃんと資格を取ってこいよ」
みつおは無線班だったので、関係ない資格ではないので許可は降りるのだが、どうせみつおの事だから酒を飲みに行く口実だろと誰もが思っていた。
しかし、みつおはそう思われているのがシャクで、夜勤の時にしっかりと勉強して、実際に試験に合格して無線ハムの免許を取得したのだった。
「おぉ、遊びだけじゃなかったんだな」
周りは突っ込むネタが無くなってガッカリしているのだった。
そんなある日
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