「小松成美の伝え方の教科書 ノンフィクション作家に学ぶコミュニケーション術」
vol.33「生きづらさこそ、魅力であり、表現の糧である〜直木賞・向田邦子〜」
【今週の目次】
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1. 成美のつぶやき
└エンターテイメントとしてのハリウッド映画
└36年誰にも代役を渡さなかったトム・クルーズ
└映画制作の裏にあったあるエピソード
2. 生きづらさこそ、魅力であり、表現の糧である〜直木賞・向田邦子〜
└ 直木賞作家の「死」
└ 秘密めいた向田邦子
└ ある人のとっさの一言で得た「直木賞」
└50歳を過ぎてスタートした新しい自分
└諦めることが何よりも嫌いだった
└生きづらさも、自分の人生
3.小松成美の質問コーナー
4.お知らせ
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1. 成美のつぶやき
エンターテイメントとしてのハリウッド映画
今回のつぶやきは、新型コロナウイルス感染拡大による公開延期を経て、2022年5月27日に公開以来、空前の大ヒットを博している『トップガン マーヴェリック』についてお話ししたいと思います。
本作は、1986年のアメリカのアクション・アドベンチャー『トップガン』の続編として制作され、当時の主演をつとめたトム・クルーズが36年の時を経て再び同じ役を演じました。
今でも上映しているので、ご覧になった方も多いでしょう。私も、劇場で観てきました!
観る前には前作の『トップガン』を観て予習・復習をして(笑)。
『トップガン』(原題: Top Gun)は、1986年のアメリカの航空アクション映画です。トム・クルーズが演じるのは、空母エンタープライズに乗船する若き海軍飛行士ピート・マーベリック・ミッチェル大尉です。
海軍エリートパイロット養成学校のナンバーワンであった伝説のパイロット・マーヴェリックの栄光と挫折、ロマンスを描いて、1986年の全米興行成績1位を記録しました。
主演のトム・クルーズは一躍トップスターの仲間入りを果たし、彼をスターダムの頂点に押し上げた出世作です。助演のヴァル・キルマー、メグ・ライアン、アンソニー・エドワーズ、ティム・ロビンスら、同作に出演した若手俳優の出世作としても知られています。
『トップガン』が公開された当時、私はOLでした。後に作家になり、今のような生活を送っていることなど全く想像していない頃の事です。
私はトム・クルーズと同い年。彼が20代前半に本作に出演し、ハリウッドのスターになって輝いていく様をリアルタイムで感じていました。
トム・クルーズ演じるピート・ミッチェル(マーヴェリックは彼のコールサインです)はアメリカ海軍の艦上戦闘機・F-14のパイロット。同じパイロットであった父親デューク・ミッチェルの謎の死に疑問を抱きながら、野生の勘を頼りに無鉄砲で型破りな操縦を行う天才的なパイロットです。
当時のソ連が運用しているミグに遭遇し、空中戦を戦ったりするシーンがあったりと、冷戦時代の緊張をそのまま映画で描きました。自国の危機や親友の死を乗り越え、仲間たちとの苦闘や恋を通じて成長していく姿を描いた青春航空アクション映画の傑作です。
トム・クルーズは今年60歳を迎えましたが、2022年公開の『トップガン マーヴェリック』でも、外見も演技も若々しく、「老練な」「燻銀の」「ベテランの」などという形容詞は似つかわしくなく、映像の中でも驚くほど輝いていました。そのことに、私は驚きながらとても感動していました。
亡くなった親友の息子が登場したり、当時ライバルだったパイロットが闘病中だったり、ピート自身もスターパイロットから教官に立場を違えていたりと、時間の経過が描かれています。
『トップガン マーヴェリック』は、戦闘機のパイロットを主役として、ならず者国家との闘いを描いているので、もちろん、ロシアのウクライナ侵攻や、中国や北朝鮮の存在も頭をよぎります。不穏な世界情勢が報じられる中、政治的背景と紐付けて作品を観ることもできます。
しかし、冒頭には圧巻の戦闘機での空挺シーンがあり、観るものを魅了します。エンターテイメントとしての完成度が素晴らしく、「ハリウッド映画って凄いな」と純粋に感動する見せ場が満載です。
1作目の『トップガン』撮影当時の23歳から36年経った今も、先頭を走り続けているトム・クルーズ。俳優としての彼の熱量、カリスマ性、求心力、「映画というエンターテイメントで人々の心を鷲掴みにすることの天才なのだな」と改めて感じました。
36年誰にも代役を渡さなかったトム・クルーズ
本作は、アメリカ海軍が全面支援をして戦闘機を提供し、アメリカという国の強さや正義の象徴とも言える作品でもあるのですが、私が最も心を動かされたのは、トム・クルーズの「貫かれる意志」でした。
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