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日刊 大石英司の代替空港

日刊 大石英司の代替空港
日刊 大石英司の代替空港 ▲▽戦場の霧▽▲  まず、悲しいお知らせです。すでにAmazonで告知があったにも関わらず、10月 刊を落としてしまいますたorz。あと2歩くらいでしたが、力及ばずでした。  原稿が落ちるということの説明が求められる時代になりました。昔、うちの業 界では、原稿は当たり前に落ちる。納期が守られることはない、というのが当た り前の合意事項でした。ところが、それが当たり前でなくなってもう20年以上経ちます。  作家に時間を与えれば、納期は守られて当たり前という時代になって久しい。 なぜかと言えば、本が売れなくなって、業界全体がシュリンクしていく過程で、 納期を守れない書き手は淘汰されて行ったからです。一人の作家でべらぼうに稼 げる時代は過去のものになり、この作家は黒字だけど、でも酒癖とかセクハラパ ワハラを我慢してまで付き合うほどのものではないよな……、という時代がやっ て来て、納期を守れない作家というのもどんどん切られていった。以前は、原稿 は右から左へは出て来ないということが合意事項だったのに、原稿を右から左へ 出せる作家しか生き残れなくなり、それが当たり前になった。  難産か否かは、陣痛が来た後でなければ解らないのに、それが予見できて事前 に対処できるのが当たり前の作家の資質とされるようになった。  量産作家の最低条件は、納期を守れることです。私は量産作家として、納期を 守るということに関して、実はそんなに酷い方ではありません。そこそこ納期を 守れるから生き残って来た。でないと年間8冊とか出せません。  ただ、私の周囲にいる編集者は、そういう、原稿は落ちて当たり前、という時 代を全く知らない世代です。そして会社という所は非情です。ゼレンスキーでは なくプーチンですw。  予定通りの戦果が得られなかったことの説明を求められる。原稿が落ちたこと の正当な理由はあるのかが問われる。そもそも原稿が落ちることに、これという 明確な理由はありません。われわれはいつも命を削って、難しい任務を負ってい ます。突破出来そうにない障壁をいくつも突破し破壊して前進した果てに、遅れ た理由は何だ? と問われても返す言葉はない。  クリエーターが置かれている状況を最も的確に表現する言葉が実はあります。 「戦場の霧」です。  原稿用紙というまっさらな紙を征服するためにひとたび出撃したなら、そこに はありとあらゆる不確定要素が降り注いで前進を阻む。遅滞し、後退し、迂回を 強いられ、ゴールに辿り着いた時にはもう満身創痍です。ゼロから有形なものを 創造するという作業はそういうことです。  でも、企業というのは非情です。スーパーマンがそこで戦っているように錯覚 している。その資質と資格を完璧に備えたものが、きっちりと結果を出して毎回 涼しい顔で納期を守っていると思っている。仕事であるからには、それが出来て 当たり前。そもそも士気が低い、サボってのことだろう、と一定数は考える。ブ ログとかくだらんことに時間を使っているからだと非難される。

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  • 作家・大石英司が日々の出来事に関して alternative な視点を提供するマガジンです。政治経済軍事からヲタ他の柔らかい話題まで扱っています。 原則として、毎日発行です(今は月2回、日曜のお休みを貰っています)。契約上は、土日祝日及び、日本の労働習慣に照らして妥当と思われる日数の定休日を頂戴することを明言しております。 システム上、「不定期発行」となっていますが、設定を「不定期発行」にしないと、土日のお休みや、発行者の病気等によって、突然休んだ場合に、システムが事故発生中と判断して、最悪の場合、発行できなくなる恐れがあるからです。
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