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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
vol. 142
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みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、ライブコマースについてご紹介します。
中国のライブコマースの流通総額は、2021年で2兆3615.1億元(約48.5兆円)となり存在感が出てきました。日本のEC全体の流通総額は20兆6950億円なので、中国のライブコマースは日本のECの2倍以上の規模になっています。
米国や日本でもライブコマースは始まっていますが、目立った成果をあげている例はまだありません。それどころか、早くも撤退をするプラットフォームも出てきている状態です。
なぜ、中国だけでライブコマースは盛り上がっているのでしょうか。なぜ、中国以外はまったく受け入れられないのでしょうか。
その答えは、このメルマガの読者の皆さんであれば、すでにご理解をしているかと思います。中国のECの成長の限界が訪れ、各企業は脱出口の模索を続けてきました。そのひとつがジャック・マーの提唱した新小売=OMOであり、そのひとつが私域流量の獲得なのです。
今回は、このロジックをご紹介し、日本でのライブコマースがどうなるかを占います。今回は、なぜ中国だけでライブコマースが人気になるのかという問題を考えます。
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 142
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▼目次▼
ライブコマースはなぜ中国だけで人気なのか。その背後にあるECの成長の限界
小米物語その61
アリババ物語その61
今週の「中華IT最新事情」
Q&Aコーナー
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ライブコマースはなぜ中国だけで人気なのか。
その背後にあるECの成長の限界
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今回は、ライブコマースについてご紹介します。なぜ中国だけでライブコマースが人気となり、日本や米国では人気が出ないのか、その理由を考えます。
2018年頃から中国でライブコマースが広がり、コロナ禍により生活に定着をすると、ライブコマースは日本を含めた海外にも広がり始めました。ところが中国以外ではほとんどうまくいっていません。Facebookもライブショッピング機能を10月1日に停止することを発表しました。
米国のアマゾンもアマゾンライブ(
https://www.amazon.com/live)を運営していて、今のところ続いていますが、その視聴者はあぜんとするような惨憺たるものです。米国時間とは時差があるため、米国のプライムタイムに見ることが少ないからかもしれませんが(米国の夕食後の時間は日本の早朝になる)、視聴者数が100人以下というライブコマースばかりです。視聴者数1桁もかなり見かけます。
日本で、インスタグラムを利用したライブコマースでは、数百人、数千人というものを見かけるようになりましたが、現在のところ、インスタグラムには小紅書(シャオホンシュー、RED)のような種草機能、つまりライブコマースなどに商品タグを埋め込む機能がなく、ECサイトへリンク誘導できるだけですので、実際に購入に至る人の割合=コンバージョンはかなり低いのではないかと想像しています。
内容を見ても、多くのブランドが、小売チャンネル、新規顧客の獲得というよりも、既存顧客に商品やブランドを紹介し、深く知ってもらうためのコミュニケーションツールとして使っているようです。この考え方は正しいと思います。すぐに視聴者数が増えたり、売上に結びつくことはなくても、地道に続けることで、ブランドの世界観を広げることができるかもしれません。
しかし、ライブコマースもビジネスとしてやっているのですから、投資効率が悪ければ、打ち切りの判断をしなければならくなります。Facebookの親会社であるメタはそういう判断が早い企業なので、他社に先駆けてサービス停止の判断をしたのでしょう。
なぜ、ライブコマースは中国では拡大する一方なのに、他国ではさっぱりなのでしょうか。いったい中国のライブコマースと他国のライブコマースにどのような違いがあるのでしょうか。今回は、この問題を考えてみたいと思います。
まず、中国のライブコマースの発展ぶりを見てみます。「2022年(上)中国ライブコマース市場データ報告」(網経社電子商務研究センター)に、ライブコマースの市場規模と2022年の予測値が掲載されています。
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