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佐々木俊尚の未来地図レポート 2022.9.19 Vol.722
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【今週のコンテンツ】
特集
近代と現代で、書籍のテクノロジー変化は何が異なるのか?という視点
〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(7)
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
近代と現代で、書籍のテクノロジー変化は何が異なるのか?という視点
〜〜〜世界観を「四次元化」していくという考え方(7)
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今年出したわたしの新著『読む力 最新スキル大全』を補足し、どのようにして世界観を構築していくのかを深掘りしていくシリーズの第7回です。
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これまで、情報の「三次元化」と「四次元化」を説明してきました。あるテーマについて単一の視点だけでなく、さまざまな視点で見ることによって立体的なイメージが描けるようになる。これが三次元化。さらに加えて過去の経緯などを学ぶことで、さらに立体はふくらみをもった「四次元」のイメージに変わる。
ではこの「四次元化」は未来予測にも使えるのだろうか?というのが、前回の主題でした。題材は「電子書籍が普及することは、人間社会に何をもたらすのだろうか?」
これを考えるためにまず、羊皮紙の写本から紙の本への変化が、近代のヨーロッパ社会にどのような影響を与えたのかという過去の経緯を学びました。それまで修道院の図書室に閉じ込められていた「知」が、安価で大量生産できる紙の本によってオープンになり、「知」の流通を招いたということです。
ではこの過去の話は、どのようにしたら未来に当てはめられるでしょうか。そこで電子書籍の登場となります。15世紀に獣皮の写本から紙の本に変わったということを、21世紀に紙の本から電子書籍に変わるということに重ね合わせてみるのです。
獣皮の写本と紙の本の違いについては前回も書きました。写本は一冊一冊は災害に強く丈夫でした、コピーが少ない。だから戦争などで消失してしまう危険性がつねにあったのです。古代エジプトにあったアレキサンドリア図書館には数十万ものパピルスの本がありましたが、ユリウス・カエサルが焼き討ちにするなど何度も破壊や略奪にあい、ほとんどの本が消失してしまっています。
いっぽう紙の本はペラペラで火にも水にも弱いのですが、コピーがたくさん作られるので、すべてが失われる危険性は写本よりも小さいのです。
これが電子書籍に変わるとどうなるでしょうか?
電子書籍は単なるデジタルデータです。データはとても小さく、漫画のような画像中心の電子書籍データでもせいぜい100メガバイトぐらい、ふつうの長さの小説だと10メガバイトぐらいしかありません。ビッグデータの現代においては、ミジンコかオキアミぐらいの小さな存在です。
しかし紙の本と違って、電子書籍はほとんど原価ゼロで無数にコピーすることができます。電子書籍サービスのサーバーがある堅牢なデータセンターが破壊されたとしても、世界じゅうにコピーがあるからたちどころに復元することができるでしょう。紙の本だと印刷し保管するのにコストがかかるから、刊行から年月が経って売れなくなった本は絶版にされてしまいます。世界にはこれまで数百億冊の本が作られましたが、そのうちいまも市場で流通しているのはわずか10パーセントしかないと言われています。
しかし電子書籍だと、保管のコストが限界まで小さいので、わざわざ絶版にする必要がありません。何十年も前の、ほんの少部数しか売れなかった無名の本だって、いつでも誰かが電子書籍ストアから掘り起こしさえすれば読めるのです。
一方で、電子書籍のストアが閉鎖されたり、ストア側の一方的な都合で絶版されてしまえば、端末の電子書籍リーダーで読めなくなってしまうという問題もあります。
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