■なぜ、いつも後回しにしてしまうのか
人生は一度きりだ。夢があるなら、自分を変えたいなら、今の生活
を少しでも変えたいなら、行動するべきだ。結局、「やる」か「やら
ない」かだ。
人は、やらなかったことに、より強い後悔の念を抱く。これは研究
からも明らかになっている。やらずに後悔するより、やって後悔し
たほうがいい。それでも始められない弱い生き物が人間だ。
そんな弱い自分を愛しつつ「すぐやる自分」を作る方法がある。世
界中の脳科学や心理学の研究に基づく方法だ。大事なことは、動き
たくなる状況をつくることと、まず「5秒」だけやってみることだ。
状況とは、主に環境、ルール、ルーティンのことだ。たとえば、
「小さな目標を設定する」「悩んだ時は直感で決める」「事前にシナリ
オを作る」「スマホを見ているとき、タッピングする」などだ。
いずれも簡単なものばかりだ。それでも、驚くほど効果がある。行
動にブレーキをかけてしまいがちな脳を、逆に利用することがポイ
ントだ。
★
人間は、先延ばしをする生き物だ。現状維持に満足しがちなのだ。
生物の進化には、長い時間がかかる。ここ数千年の文明の発達など、
人類の歴史を24時間時計に置き換えれば数分前の出来事だ。
それに進化が追いつくわけがない。今を生きる私たちも、実は狩猟
時代の心と体のままだ。はるか昔の祖先たちの本能的欲求に直結
している。隙あらば楽をしたい生活を体が覚えているのだ。
とはいえ、危機感は持っていた。人間はちょっとしたことで命を落
としかねない状況で生活していた。命を守るには、日常のわずかな
変化や違和感に気づき、それが危険かどうか見極める必要があった。
現代の人間も心のメカニズムはほぼ昔のままだ。だから、不安にな
りやすいのだ。これは、生存競争で不安を必要とした先人のDNA
であり、遺訓でもあるわけだ。
★
何か新しいことをはじめることは、安穏とした状況から変化を起こ
すことだ。だが、人間はどんなに小さなことでも、変化に不安を覚
える。できれば今の状態を崩したくないのだ。
だから、不安を感じやすい人ほど行動できない、先延ばしする。し
かも、効率を突き詰めずに生きてきたという何百万年前のバックグ
ラウンドもある。
状況を変えることに対して「このままでいいんじゃないの?」と考
える本能がある。だから、人間は動かないのだ。「やる気」が起き
ないのだ。
つまり、すぐに動けず苦悶することは、人間である以上、仕方のな
いことなのだ。だから、やる気が起きない自分を過剰に責める必要
はないのだ。
★
最初の5秒、動くことだ。それだけでいい。ソファーで寝っ転がっ
ていたら「よし」と奮い立たせて「5秒」だけ行動してみることだ。
この動き出しが、やる気エンジンを始動させる。
勉強や仕事をしなければならないなら、机に座って参考書やパソコ
ンを開いてみる。掃除なら、掃除機を持ち出し電源をONにしてみ
る。この行動をするために5秒だけがんばるのだ。
「やりたくない」という本能的な感情の脳が「大脳辺縁系」だ。そ
の活動を抑えこんでくれる理性の脳が「前頭葉」だ。これが働き出
すまでに5、6秒かかる。
ただし、脳には一度行動を始めると、のめり込んでしまう性質があ
る。この正体が「淡蒼球」という脳の部位だ。これを刺激するには、
体を動かして行動することだ。プロペラを自分で回すのだ。
ただ、一度回してしまえばこっちのものだ。あとは「淡蒼球」が、
やる気エンジンを活発化させてくれる。まずは自ら「回す」こと
が重要なのだ。
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