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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
vol. 143
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みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、WeChatチャネルズについてご紹介します。
WeChatチャネルズ(視頻号)は、中国の国民的SNS「微信」(ウェイシン、WeChat)の中にあるショートムービーの共有機能です。簡単に言えば、TikTokそっくりの機能です。英語の名称はWeChat Channelsですが、日本の和製英語風に言えば「WeChatチャンネル」という意味です。
前回のメルマガでもご紹介したように、淘宝網、京東の伝統的ECがこれ以上の新規ユーザーの獲得が難しくなっています。そのため、多くのブランド、販売業者が、ショートムービープラットフォームである「抖音」「快手」に注目をして、ムービーに商品タグを埋め込んで販売する種草、ライブ配信で販売するライブコマースに注目をしています。
そこにWeChatが対応をしてきました。つまり、ライブコマースプラットフォームは「抖音」「快手」に加えて、WeChatチャネルズという3つで競争が始まることになります。
この3つのプラットフォームは見た目は似ていますが、その背後にあるソーシャルグラフ構造がまったく違っています。そのため、ライブコマースの傾向も違ってきています。
今回は、この3つのプラットフォームのソーシャルグラフ構造の違いをご紹介し、どのプラットフォームにどのようなライブコマースが適しているのかということをご紹介します。
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 143
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▼目次▼
「抖音」「快手」「WeChatチャネルズ」三国志。ライブコマースとソーシャルグラフの関係
小米物語その62
アリババ物語その62
今週の「中華IT最新事情」
Q&Aコーナー
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「抖音」「快手」「WeChatチャネルズ」三国志。
ライブコマースとソーシャルグラフの関係
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今回は、WeChatチャネルズ(視頻号)についてご紹介します。
WeChatチャネルズとは、中国でほとんどの人が使っている国民的SNS「微信」(ウェイシン、WeChat)の機能のひとつで、次々とショートムービーが見られるというものです。簡単に言えば、WeChatの中にあるTikTokのようなものです。
TikTokのベースになったバイトダンスの「抖音」(ドウイン)が中国で大成功をし、さらにその国際版であるTikTokが成功をすると、世界でにわかにショート動画ブームが起きています。YouTube、Facebook、インスタグラムなどがショート動画に対応をしました。
しかし、中国でのショートムービーの位置付けと海外でのショート動画の位置付けはかなり違っています。YouTubeのショート動画のあり方がいちばんわかりやすいと思いますが、あくまでも縦画面、短尺の動画というコンテンツの一形態にすぎません。従来からある動画のひとつのバリエーションという扱いです。ですので、ネットでは「ショート動画で収益化するには?」という話題が多く、従来どおりユーチューバーがショート動画を作成し、表示される広告収入の分配を受けるというものになっています。ビジネスモデルとしては従来の動画と基本的に変わりません。
一方、中国でもショートムービーを配信して、広告収入は得ることはできますが、多くの配信主は広告収入をあてにしていません。何で儲けるかというと、ひとつはショートムービーが拡散をして知名度が上がることによる企業案件です。企業がムービーの内容を見て、自社の商品やサービスを紹介するムービーの制作と公開を依頼するというものです。
もうひとつが「帯貨」(ダイフオ)と呼ばれるものです。「商品を持って」という意味で、「帯貨直播」であれば「商品を持ってライブ配信を行う」、つまりライブ配信で商品を販売するライブコマースという意味になります。
ショートムービーの中で商品やサービスを紹介して、その場で販売をすることもできます。このようなムービーには商品タグが表示されるので、タップをすると、購入画面が現れ、その場で買うことができます。いわゆる「種草」(ジョンツァオ)です。このように、物販がショートムービーでの収益化の中心となっています。
2021年の抖音の流通総額(GMV)は、8000億元(約16.4兆円)、快手のGMVは6800億元(約13.9兆円)になりました。日本のECでは、楽天が4.5兆円、アマゾンが3.2兆円と報道されているので、いくら人口の多い中国とは言え、ものすごい規模の数字です。この規模の売上が、ショートムービーとライブコマースだけで生み出されているのです。
この抖音と快手に対抗するため、テンセントはWeChatの中に2021年2月にチャネルズを追加しました。テンセントのねらいも同じで帯貨による利益をねらっています。もちろん、ライブコマースも可能になっています。
テンセントは、チャネルズのGMVなどの詳細な数字を発表していません。しかし、「2022年中期報告」には次のような記述があります。
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