【新商売】
「ほーぅ
なるほど、賢いな」
みつは、新商売で成功した人の本を読んでいた。
自衛隊の勤務は、日勤と夜勤に分かれていた。
日勤と夜勤と夜勤明けのスタンバイの日があり、そのローテーションで勤務するのだが、夜勤はそれほどやる事もなく、ただ緊急事態に備えて待機しているだけなので、かなり暇であり、いかに時間を過ごすかだった。
もちろん、勤務に関係ある事を勉強する必要はあるのだが、何年も経つと、マニュアルも読み飽きているので、夜勤前にはコッソリと漫画本や本を忍ばせていたのである。
今のように、スマホや携帯が無い時代なので、書物が唯一の暇つぶしだった。
休みの日に本屋で見つけた面白そうな本が、新商売で成功した人たちの本だった。
「なるほどね」
軍手を最初に広めた人は、いきなり工場を作ったのではなく、主婦を中心に依頼し、毛糸を無料で配り、作った軍手を買い取るという斬新な商法で伸ばしたと書かれていた。
そういえば、昔はみつおの母親も、紙袋を作る内職をしていた事を思い出した。
「そうか、あれはこの手の商法だったんだ」
材料を提供し、バイト代として作った商品を買い取るのである。
これなら、工場を作る費用も削減できて、材料費と人件費だけで利益を出せるのである。
その本を読んでいるうちに、自分も新商売を考えて一攫千金を狙いたいと思うようになっていた。
夜勤はヒマなので、そんなことばかりを考えていると、
「そうだ!これは誰もやっていないからイケるかも」
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