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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第492号2022.9.13 配信分
●『身体』をテーマにしばらく書きます
私は身体という言葉をよく使う。この場合しんたいではなくて、
からだと読む。フリーランスの自動車ライターとなって45年になる
が、身体という単語が身近になったのは1983年のある出来事からだ。
プロを目指していたフレッシュマンレーサーが、バイト先のGS
(ガソリンスタンド)で出会った編集者の誘いに乗り”業界人”に
転じてちょうど5年目の同年9月。運輸省(当時)が偏平率60%の
いわゆる60タイヤを認可することになった。
発表は半年前の春先だったと記憶するが、当然自動車専門誌とし
ては気になるアイテム。当時『暮らしの手帳』的なメディアとして
企画を産み出す情報の発信源だったdriver誌の担当編集者は一計を
案じた。
すでに市場には複数のメーカーから補修(リプレイス)用として
60タイヤは販売されていた。これを一挙に集めて比較テストを行い
優劣を語ってはどうか? 誰が聞いても興味をそそられるアイデア
だが問題が2つあった。
まずはタイヤ業界の保守的な体質。当時BS(ブリヂストン)を
を筆頭に住友ゴム(ダンロップ)、横浜ゴム、東洋ゴム(スポルデ
ィングブランドで生産販売)、グッドイヤーがあったが、基本的に
開発生産より営業販売部門の発言力が強かった。
後にタイヤ性能はクルマの走りのパフォーマンスを左右する機能
部品として注目され、開発部門が脚光を浴びることにもなったが、
メディアを通じて情報が広められない段階。まだ黒く丸いタイヤの
知見は浅かった。自動車産業の中でタイヤはOEMメーカー納入が
主の一サプライヤーであり、補修市場が活気を帯びるのはロクマル
が注目され、本格的に普及するようになってからだった。
性能差が数字であからさまにされる横比較テストは、商品を直接
売る現場では御法度だ。メーカー納入品はOEM開発者が提示する
アローワンス(性能幅)に収まっていればいい。もしもに備えた供
給の多様性が優先されるからだが、顧客と対峙するリプレイスでは
そうはいかない。
次ぎに編集の実務だが、誰がどうやってテストする? タイヤメ
ーカーはいざ知らず、それまで自動車専門誌が本格的なタイヤテス
トを試みたという話は聞かない。テストのフォーマットなどなく、
一から手作りとならざるを得ない。
結果的に私がテスターとなり、考えられるテスト項目も自前で考
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