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小米物語その64
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ラカラのエンジェル投資に成功をした金山軟件(キングソフト)の雷軍(レイ・ジュン)CEOは、次の投資先を探していた。
その時、雷軍の5歳下の弟分とも言える人物が起業をしたいと相談をしてきた。その人物は、李学凌(リ・シュエリン)で、出会ったのは1998年のことだった。CEOになったばかりの雷軍にとって、さまざまなメディアのインタビューに答えることも重要な仕事のひとつだった。その取材対応リストの中に「中国青年報・李学凌」という項目があったが、名前の次の欄が空欄になっていた。
当時のメディアの取材では、取材をする記者が、取材先の企業から「お車代」をもらうことが慣例となっていた。お車代と言っても、実際のバス代やタクシー代よりははるかに高額で、いわゆる寸志であり、「うちの会社をよろしく記事にしてください」という清廉とは言えない習慣だった。通常は、取材リストの名前の後に、そのお車代の金額が記載されている。ところが、李学凌はお車代を受け取らない。
雷軍はそういう筋の通った人間が好きだ。李学凌は取材にやってきて、雷軍に面会をすると、すぐにこう言い放った。「御社の金山毒覇は、シマンテックのセキュリティ製品よりも質が劣っていますね」。
雷軍は大笑いをした。普通であれば失礼きわまりない質問だが、まさにそのとおりなのだ。さらに李学凌はWPSとマイクロソフトオフィスを比較して、事細かに劣っている部分を指摘した。その指摘は的確だったが、雷軍は答えることができず、だんだん不愉快になってきた。彼はいったいユーザーとして文句を言いにきたのか、ジャーナリストとして取材にきたのかわからなくなってきたからだ。雷軍はありきたりの答えを返して、取材を終えた。
雷軍は、気になって、李学凌が書いた他の記事を読んでみた。李学凌はテック企業の経営者を中心にインタビュー記事を書いていたが、忖度することなく完膚なきまで批判的な内容の記事なのだ。
そして、署名のところを見て驚いた。「李学凌(実習生)」と書いてある。彼は正規の記者ではなく、インターンだったのだ。それがお車代を受け取らずに、歯に絹を着せずに批判的な記事を書く。中にはクレームを入れる企業もあるはずで、きっと彼は正規の採用にはならないだろう。
雷軍はこの人物が気に入ってしまった。彼は筋が通っていて、有り余る情熱があり、しかし世間知らずで、世の中のことがわかっていない。雷軍は自分と似た何かを感じて、中国青年報に連絡を取り、李学凌と個人的に付き合うようになった。
その李学凌が起業を考えているという。雷軍が投資をしないわけがなかった。
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アリババ物語その64
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2014年3月、中国工信部は、広がり始めたスマホQRコード決済を禁止する通知を出した。問題は安全性だった。当時のやり方は、商店が自分のアカウント情報をQRコードに表示したものを印刷し、それを購入客に見せるというもの。購入客は、スマホ決済アプリでその商店のQRコードをスキャンし、金額を入力することで送金ができる。
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