年に一度の検診

ドクター畑地の診察室162.2022.10.16. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います！おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者（肺癌、喘息、COPD、肺炎など）を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説＆ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信！ https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身　自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け！radioを聴いてらんらんらん（lung lung lung）」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 年に一度の検診 検診シーズンになってきました。このシーズンになると、医療機関を受診し、一年に一度全身の検査を行う方も多いと思います。今回は検診の話をさせてもらいます。 さて、皆様の中には、かかりつけ医に定期通院されている方も多いと思います。そんな方は時々このようにおっしゃいます。「私は○○病院に通院しているから検診しなくて大丈夫」 果たしてこれは正しいのでしょうか。 現在、日本は国民皆保険制度がいきわたっており、少なくとも誰もが公平な環境で医療を享受できる環境にあると思われます。しかしながら、この皆保険制度の前提にあることは、症状があるものに関しては保険がきいて３割（人によりいろいろ）負担だが、症状がない部分に関して保険はきかず、自費診療になるということです。 例えば、高脂血症で通院中の患者が何も症状がないのに胃カメラを受けることができるのか？と問われれば、胃カメラを受けることは保険診療ではできません。ここで胃が痛いとか、胸やけがするなどの症状があれば、胃カメラを受けることは可能です。しかしながら、症状がないのに胃カメラを受けることは保険診療ではなく、自費の検診でしかできないわけなのです。 私は○○病院に通院しているから検診を受けなくていいと考えている方も多かろうと思います。例えば、高血圧で通院していれば、採血や心電図、心エコー、胸部レントゲンなどの検査は行っていると思いますが、胃カメラや便潜血検査は行っていないはずです。 Aさんは気管支喘息で近くのクリニックを通院し、喘息の投薬を受けていました。喘息症状は非常に落ち着いており、現在のクリニックに非常に満足しています。ところがある日、貧血が出現してきたことを契機に検査を行ってみると、下行結腸にかなり進行した大腸がんが見つかり、肝臓にも転移した状況だということが判明しました。Aさんは驚き、通院していたクリニックの医師にこう詰め寄ります。「何年も通院していたのにこんなに進行するまで癌がわからなかったのか？」 Aさんがそう感じることはなるほどもっともかもしれません。しかしながら、癌はかなり進行してからでないと症状が出ないこと、そして症状がない病気に対する検査は通院しての保険診療では認められず、健康診断に頼らざるを得ないわけです。あくまでも、通院しての診察は症状がある病気に対する診察であって、症状がない病気まで見つけることは一般診療には含まれていないわけです。 「検診と診察は全く違います。年に一度の住民健診は必ず受診してくださいね」私は自分の外来に通院している方にはこのようにお話しするようにしています。例えば、肺癌で通院している方は検診での胸部レントゲン検査は主治医と相談の上、受けなくてもいいかもしれません。しかしながら多くのそれ以外の検査はしっかりと受診すべきです。 検診シーズンになりました。通院している皆様も、そうでない皆様も、一年に一度の検診はしっかりと受診すべきだと思います。検診は受診しましょう。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ドクター畑地の診察室162.2022.10.16号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2022.10.23.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身　自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け！radioを聴いてらんらんらん（lung lung lung）」という毎週月曜日放送の番組を担当 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください！ ◆2022年09月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2022/09 2022/09/25 しゃっくり 2022/09/18 1年に1回 2022/09/11 治癒って 2022/09/04 アンケートを再考する ◆2022年08月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2022/08 2022/08/28 オミクロン株のPandemic