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週刊 Life is Beautiful 2022年10月18日号:On-Chain Splatter

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん UIEvolution起業話(2) (第一回は9月16日に書いたのですが間が空いてしまいました)。 Microsoftを辞めるのは意外とあっさりとしたものでした。その時の上司 David Cole に辞めることを伝えたところ、少し羨ましそうに「俺はMicrosoftを最後の仕事にするつもりなんで、もう少しここにいるよ」と言ってくれました。 当時(2000年1月)は、インターネットバブルの頂点だったこともあり、数多くのエンジニアがシリコンバレーの会社に転職したり、自分で会社を起こしていたので、私が Microsoft を辞めて Brad Silverberg が立ち上げる Venture Capital に参加することは、驚きではなかったようです(Bradは、Windows95時代に David Coleの上司でした)。 実際、David Coleはその後 Microsoft で数年働いた後、業界から引退し、釣りやボランティア活動に専念しています。ちなみに、この業界には私のようにとことん働き続ける人間もいますが、David のようにストックオプションで十分稼いだ後に、30代、40代で引退してしまう人もたくさんいます。 そのまますんなりと辞められるだろうと思っていたら、人事部から連絡が来て、当時CEOだった Steve Ballmer が面接をしたいので、時間を作って欲しいという連絡が来ました。 Steve はビジネス側の人間だったので、Bill Gates ほどには密な関係は持っていませんでしたが、(独禁法で訴えられることになった)Windows とInternet Explorerの融合とか、次世代OSだったはずのCairoを開発中止に追い込んだ件なので、私のことは認識していたのだと思います。 実際に会ってみると、開口一番で「Bradと一緒に働くそうだな」と私の行き先に関して知っていることを伝えた上で、色々な質問を投げかけて来ました。何がMicrosoftに不足しているのか、とか、(まだ行使する権利をもらっていない)ストックオプションを放棄することに対する気持ちとかです。 Steve は、Bill Gates の片腕として Microsoft の成長を最初から支え、人間味に欠けるBill Gates を補う形で、Bill Gates に次ぐ大きな役割を80年代から90年代に果たして来ましたが、引退を表明した Bill Gates の後を継いで CEO になったとたんに、インターネットバブルで潮目が大きく代わり、それまで Microsoftを支えて来たエンジニアたちが次々に辞めてしまうことに、本当に戸惑っているようでした。 Brad が Microsoft から訴えられても困るので、Brad には私から相談に行ったのであり、決して「引き抜き」のような行動は行われなかったことを伝えました。Microsoft に限らず、米国の多くのIT企業は、人を雇う際に「会社を離れた後、2年間は引き抜きをしない」という契約書にサインさせます。 当然、Bradもそんな書類にサインしていたので、彼に迷惑をかけないためにも、その辺りをはっきりさせておく必要があったのです。 On-Chain Splatter NFTをミントする人にガス代を負担してもらうことにより、ブロックチェーン上にオープンな形でベクトルデータを書き込んでいく「Asset Storeプロジェクト」は順調に進んでおり、現時点で1482個のベクトルデータがAsset Store には書き込まれています。 そのデータを応用したプロジェクトとしてスタートした Draw2Earnアプリ「On-Chain Canvas」も順調に開発が進んでいますが、その過程で派生した「Fully On-Chain」というフルオンチェーンでジェネラティブ・アートのプロジェクトがかなり形になって来たので、そちらを先にリリースする準備をしています。 大まかなアーキテクチャは下の図の通りです。SplatterProviderというスマートコントラクトが、「Splatter」と呼ばれるインクが飛び散ったようなイメージを生成し、それを On-Chain Canvas の開発過程で定義した IAssetProvider インターフェイスを通じて外部に提供します(SVGHelperは、SVGを生成するスマートコントラクトが必要となる機能を集めたスマートコントラクトです)。 それを使って MultiplexProvider という別のコントラクトが、さまざまな色と大きさのものを組み合わせてジェネラティブ・アートを作り、これも IAssetProvider として外部に提供します。 SplatterToken は、MultiplexProvider が提供する IAssetProvider を使ってNFTのスタンダードである IRC721 を実装します(これにより、OpenSeaなどからNFTとして認識されるようになります)。 AssetTokenGate は、これまでクラウドミントに協力してくれた人たちに恩返しをするための仕組みで、これを利用して、その人たちだけがミント出来るNFTとか、その人たちだけに特別な割引を提供することが可能になります。 上のアーキテクチャは、3つの既存のスマートコントラクト(緑色)と5つの新規のスマートコントラクト(青色)から構成されています。新規のスマートコントラクトも再利用を前提の設計になっており、今後もレゴの部品のようにこれらのスマートコントラクトを組み合わせて新たなサービスが、(私に限らず)誰でも作れるようになっています。 実際、この後に提供する「On-Chain Canvas」アプリは、今回作ったジェネラティブ・アートを自在に貼り付けることが可能なような設計になっています。下の図がこのアプリのアーキテクチャですが、新たに付け加えるのはオレンジ色のコントラクトで、それ以外は既存のスマートコントラクトを活用する設計になっています。 これこそがWeb3の「コンポーザビリティ」と呼ばれるものです。Web2の時代のサービスと違って、すべてのサービスがオープンな形でブロックチェーン上に永続的に提供されているため、こんなことが可能なのです。 ちなみに、こうやってスマートコントラクトのことをしっかりと理解した上で、Ethereumの生みの親であるVitalik Buterin が当初書いたメモ「Visions, Part 1: The Value of Blockchain Technology」を読むと、いかに(当時19歳だった)彼が先見性を持っていたかが分かります。データを保存することができ、そのデータは非常に高い可用性を持つことが保証されます。その上でアプリケーションを実行し、遠い未来に向けて、非常に高いアップタイムを保証することができます。その上でアプリケーションを実行し、そのアプリケーションのロジックが正直で、宣伝しているとおりに動いているとユーザーを納得させることができます。その上でアプリケーションを実行し、自分が保守する気が失せても、アプリケーションの状態を操作するよう賄賂や脅迫を受けても、あるいはアプリケーションの状態を操作する利益動機が得られても、アプリケーションが動作し続けることをユーザに確信させることができる。他のアプリケーションが生成したデータを非常に簡単かつ効率的に利用するアプリケーションを構築できる(例:決済と評価システムの組み合わせは、おそらくここでの最大の利点である)。 【追記】週末にこのNFTコレクションを発売し、無事に完売しました(250個)。二次流通も活発に行われており、この文章を書いている時点で、フロア価格 0.077ETH、総取引量 2ETH です。 デジタル庁

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