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いつまで治療を続ければよいのか

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室163.2022.10.23. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** いつまで治療を続ければよいのか どんな病気でもそうですが、いつまで治療をすべきか悩むことがあります。今回は進行肺癌治療について、いつまで治療を続けるべきか考えてみましょう。 全身に進行した肺癌患者さんにおいては、治療は3本柱です。分子標的薬(飲み薬)による治療、抗癌剤による治療、免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)による治療です。 例えば、ある肺癌の患者さん、免疫療法の効果があって、腫瘍が縮小しているものの、まだ腫瘍は残存しています。いつまで免疫療法を続けるべきでしょうか。(余談になりますが、肺癌患者さんに対する免疫チェックポイント阻害剤は現在5種類、上市(新しい商品やサービスを市場に出すこと。市販すること)されており、一般的には組織中のPDL-1の発現が高い方(50%以上発現する人を高発現として、肺癌患者さんのほぼ1/3が高発現となります)のほうが免疫チェックポイント阻害剤の治療効果が期待できるとされています。というわけで、長期間免疫チェックポイント阻害剤が効いている患者さんは圧倒的にPDL-1高発現の患者さんが多いです。) 臨床試験の際には、多くの臨床試験において、免疫チェックポイント阻害剤は効果があった場合、2年間継続使用することになります。しかしながら、2年たつと、腫瘍が残っていたとしても免疫チェックポイント阻害剤は中止してしまいます。 2年間で中止してしまう理由については、免疫チェックポイント阻害剤は中止してもある程度効果が残っていることもあげられると思います。実臨床では、患者さんと相談しながら、投与開始2年たっても継続使用するか、それともデータがないから中止するか相談するようにしています。 2年以上投与を続けても腫瘍が増大してくる方もいる半面、2年で中止してしまっても腫瘍が増大してこない方もいらっしゃいますので、最近はわたくし個人的には(もちろん患者さんの了解があれば)臨床試験通りに免疫チェックポイント阻害剤は2年で中止するようにしています。 抗癌剤治療はどうでしょうか。従来ですと抗癌剤治療は単独で行われることが多かったわけですが、最近では免疫チェックポイント阻害剤と併用して使用されることが多く、最初の4回(12週間)は2種類の抗癌剤と免疫療法との併用、その後は免疫療法単独もしくは抗癌剤を一種類減量して免疫療法との併用で2年間続行するという方法が主流になってきています。 ただし、その2年間の間に抗癌剤+免疫療法が効かなくなったら中止して他の治療を行いますし、耐え難い全身の副作用が出れば、その治療は中止することになります。 分子標的薬の場合はどうでしょうか。分子標的薬も数十種類あり、薬剤によって違ってくるものの、一般的に内服薬であり、病院に入院しなくても自宅で治療可能なこと、副作用が他の2製剤に比べて軽微で認容可能なことから、効果があり続ける限り、数年単位で続けることが多いと思います。 免疫療法とは違い、分子標的薬の効果は一般的には持続しません。分子標的薬だけで癌を完全に消し去ることはできないと考えられていますので、副作用がなく、効果が持続する場合は、ずっと内服し続けるわけなのです。 私の患者さんでも十年以上同一の分子標的薬を内服している患者さんもいますが、特にトラブルなく、元気に日常生活を過ごされています。 このように肺癌患者さんに対する治療をいつまで続けるか、決まった答えはないものの、免疫療法が入れば2年間、分子標的薬内服ならば、効果がある限りずっと続けることになります。 自分がどの治療を行っているのかが、治療期間を決定するうえで重要になるわけです。 ***************************** ドクター畑地の診察室163.2022.10.23号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2022.10.30.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2022年09月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2022/09 2022/09/25 しゃっくり 2022/09/18 1年に1回 2022/09/11 治癒って 2022/09/04 アンケートを再考する

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