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SNSの時代に求められている「文章術」を解説しよう 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.727

佐々木俊尚の未来地図レポート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 佐々木俊尚の未来地図レポート     2022.10.24 Vol.727 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.pressa.jp/ 【今週のコンテンツ】 特集 SNSの時代に求められている「文章術」を解説しよう 未来地図キュレーション 佐々木俊尚からひとこと ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特集 SNSの時代に求められている「文章術」を解説しよう 〜〜〜SNSは「巻き込まれるメディア」と認識し、主語を大事にたい ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ インターネット、とりわけツイッターのようなSNSが普及した現代には、昔とは異なる「文章術」が求められるようになってきていると思います。 求められる文体は、紙の時代とはまったく異なります。かつての新聞や雑誌のジャーナリズムでは、硬質でカッコいい文章が「良い」とされていました。どのような文章だったのかをもはやイメージできない人も多いと思うので、恥ずかしながらわたしの古い文章を紹介してみましょう。 * * * 若者の集まる渋谷から、首都高速を都心に向かって走ってみよう。時間は夕暮れどきがいい。ゆるい下り坂を通過し、青山トンネルのあたりから、道は再び高樹町方向へと高度を上げていく。そうしてトンネルをくぐり抜けると、突如として銀色の巨大な摩天楼が眼前を圧するように現れてくる。  六本木ヒルズ森タワーである。  摩天楼は、夕焼けを浴びて青く輝いている。硬質で未来的なデザインは、まるで松本零士が描く宇宙戦艦のようにも見える。楕円形のデザインは、日本の超高層ビル建築史の中でもひときわ異彩を放ち、周囲の街並みからも浮かび上がっているように見える。足場を組んで地道に作り上げた建築物ではなく、まるで宇宙から舞い降りてきた飛行物体のようでさえある。  森ビルが社運を賭けて完成させた大型複合施設「六本木ヒルズ」は二〇〇三年四月、開業した。街区の総面積は約八万五千平方メートル。総事業費は約二千七百億円とされる。ホテルやテレビ朝日放送センター、商業施設、文化施設が建ち並び、東京の新名所としてすっかり有名になった。二〇〇四年三月には回転ドアに挟まれて子供が死亡するという不幸な事故が起きたものの、観光客の足は止まらず、現在も一日十万人以上が訪れる観光地となっている。  六本木ヒルズの中心に位置するのが、森タワーである。地上五十四階、地下六階。その偉容は港区一帯のどこからでも眺望できる。  そしてこのビルは今や、新興”勝ち組”ネット企業の象徴としても知られるようになった。  森タワーの各フロアには、楽天やライブドア、ヤフー、サイバード、ソースネクストなど今をときめく新興IT企業が、多数オフィスを構えている。リーマン・ブラザーズやゴールドマン・サックスなどの外資系金融企業も入居し、今や日本の産業界の中心は大手町からこの六本木へと移動してしまった感さえあるほどだ。  ネットバブルが沸騰し、渋谷の街に「ビットバレー」と呼ばれるネット企業が集結して話題になったのは、二〇〇〇年初頭のことだった。  あれから五年。渋谷の街を闊歩していた若い起業家たちは、今や森タワーの豪華な社長室に座って都心の街並みを見下ろしている。 * * * これはいまから17年前の2005年、わたしの初期の著書である『ヒルズな人たち』(小学館)の冒頭に書いた文章です。この本はたしか2万部ぐらい出て軽いスマッシュヒットになりましたが、いま読み返してみると恥ずかしいほどにカッコつけていますね。 このような硬派の文章は紙のメディアにはマッチしていたのでしょう。しかしスマホの液晶画面で読むのには、まったく適していないと感じます。なぜか。 ・こまかい数字やややこしい描写など、瑣末な部分の情報量が多すぎる。 ・小説でもないのに形容詞があまりに多く、そしてきれいにまとめすぎ。 というあたりでしょうか。それらのポイントに加え、やたら「上から目線」であり「他人ごと感がある」ということも、読みにくくしている原因のひとつではないかと思います。つまり「この文章は誰が書いているのか?」という主体性が薄いということ。 わたしが新聞記者だったころ、先輩や上司からは「第三者の視点を忘れるな」とさんざん教育されました。「自分の主観ではなく、客観的な視点から原稿を書け」と。たとえば殺人事件の被害者の遺族を取材するときだって、あまり感情に寄り添いすぎずに、少し距離を置いて冷静に見ることが大事だと言われたのです。

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