今週のざっくばらん
Alconで基調講演
先週はテキサス州のFort Worthという街に行って、Alconという会社で基調講演をしてきました。
Alconは眼科医療の会社で、コンタクトレンズからレーシック用のレーザー機器まで提供する大手の一つです。昔一緒に働いたことがある Travis という友人が、そこのデジタル・トランスフォメーションを担当することになり、そこのイベントで話すことになったのです。
日本だと、この手の会社がソフトウェアを作る際には、ほとんどの場合、ITゼネコンに外注してしまいますが、米国の場合、社内にエンジニア・チームを作って開発する方が一般的です。Alconも私の知り合いを筆頭に、40人ほどのソフトウェア・エンジニアを雇い入れ、ウェブサービスやモバイルアプリの開発をしています。給料は「Googleなみに」支払っているそうです。
眼科医療の会社に向けて話すことなどないと、最初は断ろうと思ったのですが、普段私が話していることを話すだけで良いと説得されたので、引き受けることにしました。
するとイベントの担当者から、パワーポイントのスライドを用意して欲しいと言われたので、「スライドは使わない、インタビュー形式で行うので、前もって質問事項だけを準備して欲しい」と答えました。
結果から言えば、そのおかげでとてもリラックスをして話すことが出来たし、会場に来てくれた人たちにも喜んでもらえたのですが、イベントの担当者は私の反応にかなり戸惑っていたようです。
この会社では、毎年、教育イベントを開いて外から講演者を招待しているのですが、パワポのスライドを用意せずに、プレゼンをしたのは私が初めてだったそうです。
パワポを使ったプレゼンの問題点はこのメルマガでも何度も指摘しています。最悪なのは文字がぎっしり詰まったスライドを用意し、それを読むスタイルのプレゼンです。そんなスタイルであれば、資料を渡すだけで十分だし、聴衆の心をつかむことなどは不可能です。
話した内容は、 MicrosoftでWindows95を開発した時の話とか、著書「あなたの仕事はなぜ終わらないのか」に書いたスタートダッシュな働き方についてですが、これらの話は、他で話したこともあるし、文章も書いているので、余裕を持って話すことが出来ます。
何よりも良かったのは、ビデオ会議ではなく、実際に観客がいる会場でのライブイベントだったことです。やはり聴衆の反応を見ながら話すのはとても楽しく、観客にも楽しんでもらったと思います。
何よりも嬉しかったのは、講演が終わった後に、パワポのスライドの件で困惑していたイベントの担当者の女性が、笑顔で近づいて来て「あなたには良い意味で期待を裏切られたわ」と言ってくれたことです。
講演の後に、Alconの製品のデモを見せてもらったのですが、医療の目覚ましい進歩には驚かされました。もっとも印象的だったのが、白内障で濁った水晶体を置き換える人工水晶体(眼内レンズ、Intraocular lens)です。
そのためには、専用のレーザーメスで水晶体を包んでいる袋(水晶体嚢)に穴を開け、別の機械をつかって水晶体を切り刻んだ上で取り出して中を掃除し、その穴から人工水晶体を袋に入れて固定させるそうで、そのプロセスをビデオで見せてくれたのです。
ちなみに、せっかくのテキサスなので、ステーキ屋さんに行きました。ウェイターおすすめのバッファローのプライムリブをミディアムレアでお願いしました。ほぼレアの肉が出て来たので少し焦りましたが、とても美味でした。
UIEvolution起業話(2)
ベンチャーキャピタル(VC)である Ignition Partners に参加して、私がやる仕事は、ベンチャー企業の技術評価でした。
VCにはベンチャー企業から数多くのビジネスプランが送られて来ますが、すべての企業と会う時間はないので、まずは書類審査で「会う価値のある企業」を見つけ出す必要があり、私はその技術面を担当していたのです。
Ignition Partners は、ソフトウェアのMicrosoftと、通信業のAT&T Wiressから来た重役たちで作ったVCだったこともあり、ソフトウェアと通信事業の交差点でビジネスをしようとするベンチャー企業に焦点を当てていました。Ignitionが設立されたのは2000年の1月で、iPhoneが発売されるよりも7年も前のことです。
当時、携帯電話網はようやく最初のデータ通信が始まったところで、2Gと呼ばれていました。通信スピードは高々32kbsで、通常のウェブサイトを表示するには遅すぎました。それに加え、携帯電話に使われていたプロセッサも貧弱で、ブラウザーを走らせる能力はありませんでした。
そこで、NTT DoCoMoは、CHTML(Compact HTML)という仕様を作り、その仕様に基づいた軽量のブラウザーを搭載した携帯端末を発売し、世界初のモバイル・インターネット・サービス、i-mode を立ち上げました。このプロセスで重要な役割を果たしたのは、日本のアクセスで、CHMLブラウザーの市場では、ほぼ100%のシェアを持っていました。
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