アメリカ国内のアカデミズムの中では、超タカ派と超ハト派とが
激しく対立しています。
すなわち、
「2%インフレ目標を達成するためには、ウエルFRBは政策金利
のターミナルレートを5.00%~5.50%にまで引上げて、失
業率を6%まで上昇させて、不況の状態を向こう5年くらい維持
しなければいけない」とする、ローレンスサマーズを筆頭にした
超タカ派パたちと、
「今現在の高インフレは、供給サイドのパンデミックの後遺症が
導き出したものなので、パウエルFRBはびしばし政策金利を引上
げなくても良い。パンデミックの後遺症が治まれば、そんなに利
上げしなくても、インフレは自然に収束してゆく」とするクルー
グマンを筆頭とする超ハト派(=慎重な利上げ派)たちの間で、
激しい論争が巻き起きているのです。
ローレンスサマーズなどのタカ派の言い分は、「マネーサプライの
増大」に注目しています。彼らタカ派は、「1970年代のような
スタグフレーション時代」が再び繰り返されてしまうと警鐘を鳴
らす人々です。
クルーグマンなどのハト派の言い分は、供給サイドの構造変化に
着目しています。彼らハト派は、「パンデミック後のアメリカ経済」
と「ドルショック後の70年代のアメリカ経済」とは、構造がまる
っきり違っているとする立場です。
彼らハト派が着眼していることは、今のアメリカ経済は、企業で
はグローバルゼーションの巻き戻しが始まっている、消費者や労
働者の間では「パンデミック後遺症」とも呼ぶべき行動変化が起
きていることに着眼しています。
すなわち、パンデミックが去っても、早期にリタイアする人々や
職場に復帰しない人々、労働時間を削減する人々が増えて、労働
参加率が急低下している結果、賃金が上昇していること。消費行
動も引続き「密」を避ける人々が未だに残っていること。
これらの要因が重なって、高インフレを巻き起こしているとのこ
とです。
ハト派たちは、こういった企業や労働者や消費者の行動が、パン
デミック前の行動に戻ってパンデミック後遺症から立ち直ること
が、インフレを退治するとしています。
すなわち、インフレ退治に必要なのは「これ以上の金融引き締め」
では無く、「時間そのもの」だとする立場です。彼らによれば、イ
ンフレはこれ以上の引き締めをしなくても、放っておけば自然と
時間が解決してくれるはずのものなのです。
FRBの内部でもこういったタカ派とハト派の対立はあります。
11月1~2日のFOMCでは、声明文はハト派的でした。
ところが、FOMC後の記者会見では、議長は「秋場のラリー」を
大きく牽制する発言を行いました。議長の記者会見を境に、「秋の
ラリー」は終焉しました。
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