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米国の「ワナに嵌った」習近平、中華思想振りかざしても勝ち目はない

勝又壽良の経済時評
  • 2022/11/14
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棚上げの改革開放政策 洋務運動失敗の前例も 米国のカウボーイ精神 最近、生物学者の福岡伸一氏による興味深い話が、NHK総合で放送された。テーマは、生命の「動的平衡論」である。生物学に無縁である私を引き付けたのは、人間の生命が38億年も続いてきた裏に、細胞の「創造的破壊」があるという指摘であった。 これは、社会組織にも通用する話だ。中国の習近平氏は、改革開放政策を忌避して、習近平思想なるものを信奉せよと命じたが、社会の「生命」を縮める危険な信号である。習氏は、バラエティに富む思想(栄養価のあるエネルギー)を禁止して、単一の習近平思想(不味い食事)で社会を動かすと言うのに等しい暴論だ。「動的平衡論」と真逆の話である。 生命体は、多彩な食べ物を摂取することで細胞が活発に入れ替わりながら、全体として恒常性(バランス)を保つシステムという。福岡氏の強調する「動的平衡論」は、生命体が十分な栄養を摂取して、円滑に細胞を入れ替ることで「生きている」状態(平衡)を維持できるとしている。社会も同じ理屈であろう。多彩な思想を受入れて行くことによって、「動的平衡」が維持可能になる。そういう社会だけが、生成発展し続けられるはずだ。習氏は、逆パターンを選んで国民へ強制しているのである。 棚上げの改革開放政策 習氏は、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)の立法手続きを定める「立法法」を改正する。具体的には、「改革開放を堅持する」との記述を削除し、習近平氏の政治思想を順守するように明記するというのだ。これは、経済関連法案の優先度が後退する可能性を示唆するもので、中国経済の成長発展にとって見逃せない重大問題である。 現在、「立法は憲法の基本原則にのっとり、経済建設を中心とする」との文言がある。習氏はこれを削除し、代わりに習氏の政治思想を指す「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を導きとし、「中国の特色ある社会主義の法治体系を建設する」と書き換えるというのである。この書き換えは、鄧小平が目指した中国経済近代化を意味する「改革開放政策」と取り止めて、習近平思想に従う社会主義法治体系を建設する、としている。 ここで、一つの歴史的寓話を申し上げたい。秦の始皇帝は、中国を初めて統一国家にまとめ上げた人物であるが、絶えず謀反の起こることを警戒した。そのため、農本主義を採用して、商工業を弾圧する「士農工商」制度を取り入れた。 農業を最も重視したのは、農業が年に一度の収穫であることから過剰な富を蓄積できない点を重視したもの。商工業は、いかようにも富を蓄積して謀反を起す危険性があるとした。こうした政治的安定維持が、中国の歴代政権の統治目的となった。

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  • 勝又壽良の経済時評
  • 経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。
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