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ツイッターで広がる「共同反芻」こそが、怒りや憎しみの原因だ 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.731

佐々木俊尚の未来地図レポート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 佐々木俊尚の未来地図レポート     2022.11.21 Vol.731 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.pressa.jp/ 【今週のコンテンツ】 特集 ツイッターで広がる「共同反芻」こそが、怒りや憎しみの原因だ 〜〜〜なぜ共感し、寄り添うという善意が憎しみへとつながってしまうのか 未来地図キュレーション 佐々木俊尚からひとこと ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特集 ツイッターで広がる「共同反芻」こそが、怒りや憎しみの原因だ 〜〜〜なぜ共感し、寄り添うという善意が憎しみへとつながってしまうのか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ イーロン・マスクの買収劇をきっかけに、ツイッターというプラットフォームの存在の意味があらためて議論になっています。 ★ツイッターはSNSなのか、それともメディアなのか問題|佐々木俊尚 https://comemo.nikkei.com/n/n3e986c4cb9ff 少し前に日経のオピニオンサイトCOMEMOに投稿したこの記事でも書いたのですが、ツイッターが最初に流行ったころは単なる「日常のつぶやきを放流するSNS」でした。古株の皆さんならおぼえているしょう、「ランチなう」とか牧歌的なことを書いていた2009年のころのことを。 それが2010年代になると、単なる「つぶやき」だけでなく、ニュースや政治的発言などが流通する巨大な情報流通インフラへと変わっていきました。その後押しになった最大の功績者は、リツイート機能でしょう。リツイート機能は、それまでのSNSとはくらべものにならないほどの非常な拡散力と素早い伝播力をツイッターにもたらしたのです。リツイートが日本語版でできるようになったのは2010年からです。 さらに2015年になると引用リツイートも可能になりました。引用リツイートの実装は、たいへん大きな意味を持っておりました。他人のツイートに対して、批評的に言及することが可能になったからです。それまでの単なるリプライだと、何の議論をしているのか第三者にはわかりにくかったのですが、引用リツイートなら参照元のツイートがつねに表示されるため、「何の議論か」が見える化されやすくなったのです。 これらの機能実装は、ツイッターをニュースのインフラとしてさらに押し上げる効果がありました。同時に日本では2010年代のこの時期、ちょうど新聞の購読部数が激減していった時期に当たります。2000年代までは国内の総部数が5000万部台を維持して、それほど大きな減少はなかったのですが、2010年を境に一気に減少幅が加速したのです。2021年にはなんと3300万部。3000万部割れも目前と言われています。 この新聞の衰退をカバーするようにして、「ツイッターでニュースを知る」という習慣が当たり前になっていったのが2010年代から20年代にかけての変化だったと言えるでしょう。 日本の場合には、政治状況の変化もあります。2011年に東日本大震災が起き、震災直後には被災や支援などのさまざまな情報がツイッターでシェアされ、また東京では帰宅難民になった人たちが帰宅ルートを探ったりトイレの場所を探したりするのにツイッターを駆使したこともあって、ツイッターは単なるつぶやきの遊びじゃなく生活必需品になるという認知が広まりました。 しかし一方で、福島第一原発事故をめぐって放射能デマを流すデマゴーグな人たちが大量に現れ、この人たちはツイッターを使って陰謀論などを大量にシェアし、さらには冷静な対応を呼びかける放射線医療や物理学の専門家たちを「御用学者」などとやはりツイッターで中傷し、といった現象が広範囲に起きました。 ツイッターには実用的な使い道もあるけれども、いっぽうでデマゴーグが人を惑わす道具にもなるという「諸刃の剣」であることが広く知れ渡ってしまったのです。 さらに2012年には、政治の世界で民主党政権が崩壊し、第二次安倍政権が成立。安全保障を中心に、戦後政治のわくぐみを現代に合わせて変更しようとした安倍元首相には左派の人たちが猛反発し、「ツイッターデモ」「ハッシュタグデモ」のようにツイッターを政治運動のツールとして使うことが広まりました。このあたりからツイッターは本当にきわめつけの政治性の高いメディア空間になっていき、昔の牧歌的な雰囲気は急速に喪われていってしまったのです。 とはいえ、リツイート機能の実装と政治状況の変化だけでは、ツイッターがこれだけ荒れ狂う場になってしまったことの説明としてはちょっと苦しいのではないかという気もします。他にも要素があるのではないでしょうか。 そこでわたしが注目しているのは、SNSによる「共感」の爆発性です。

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